大事な子供の誕生日
最後は一つに絡まって
吐息と漏れるうめき声
高い悲鳴は掌で封じられ
静かにしろとたしなめられる
「・・・夜中だぞ?静かにしやがれ。」
「・・・あんたの・・・せいでェ。」
「誕生日だからな?土方スペシャルだ。」
「何でェ・・・それ・・・。」
「出任せだ。」
「・・・サイアク。」
出任せだろうが何だろうが
いつもより丁寧に愛撫されたのには違い無く
得た快感にも不足は無くて
とろとろと伝う雫と同じよに
総悟の瞳もとろとろと
身体繋げたそのままで
「オイ?総悟?」
ちょお前
このまま寝るなと慌てた声に
いい気味でィと微笑んで
フイと手放す意識の底で
「総悟」と自分を呼ぶ声が
『総ちゃん』と呼ぶ声と少しだけ
重なった気がして
それが意外で
気が付くと
あいも変わらぬ煙草の香り
身体の始末は済んだと見えて
サラリとした肌
清潔な敷布
こういうところはコイツがマメで
助かるんでェとほくそえみ
寝たふり続行そのうちに
本当にまた眠くなる
そんな時
ふと頭に触れてくる手の
優しい手触り
大事に
してやるから
心配すんな
と
呟く声が
自分に向けたものなのか
今はもう居ぬ姉に向けてか
判別つかぬ誕生日
撫でてくる手の温かさ
それが頭に染み込むようで
振り払いたくて
でも動けずに
男に背中向けたまま
じっとしている誕生日
日付の変わるその時に
抱きしめてくるその腕が
酷く憎くて仕方なく
乱暴に振り返って
首かき寄せて
アンタなんか
大嫌いでェ
と
囁いて
一つ大人になったキス
大嫌いな男に
くれてやった
7月8日の終わる夜
(桔梗の花言葉
「変わらぬ愛」)