本当に面倒なひとですね。
寝ぼけた目がぱちぱちと瞬きをするのを至近距離で見て、帝人はことさらゆっくりと唇を離すと、ついでに臨也のそれをぺろりと舐めた。寝不足のせいかカサカサの舌触りが、一気に実感を煽って、帝人は頬が赤くなるのを感じる。だがしかし。
「え。う、あ?」
目の前の臨也の顔ときたらそれ以上で。
意味不明の声が漏れたと思ったら、次の瞬間ぼわっと音を立てて赤くなって。
「・・・っ!!」
ぼすりと帝人の鎖骨の辺りに顔をうずめて、うわあ、なに、もう帝人ってば!とわけのわからないことを口にした後、そのまま、ぎゅっと帝人の体を抱きしめる。
「・・・もう、結婚してください・・・!」
折原臨也、決死のプロポーズ。
あまりの予想外な台詞にあぜんとした帝人が、はっと我にかえるころには、そこには健やかに眠りこける23歳児が一人。
この人本当にどうにかしてください、と帝人は大きく息をついた。
まさか僕の上で寝るとは、とか。
っていうかしがみついたまま寝ないでください、とか。
そういうことは眠くないとき素面で言ってよ、とか。
っていうか返事聞いてから寝て、とか。
言いたいことはいろいろたくさんあるけれど、とりあえず帝人は、23歳児の頭をそっと撫でながら小さく零した。
「・・・いいですけど臨也さん、今のままじゃ誓いのキスさえ恥ずかしがって無理なんじゃ・・・?」
もちろん、数時間後に臨也が目覚めたとき、帝人を抱きしめたまま寝ていたという事実のあまりの恥ずかしさに、「無理!もう無理!羞恥心に耐えられない!」と叫びながら人生からログアウトしようとするのを、帝人は「大丈夫ですから!臨也さんは強い子!いい子だから落ち着いて!冷静ログイン!」と必死でなだめる羽目になるのであった。
ああもう本当に面倒な人!
でもそこが好き!
作品名:本当に面倒なひとですね。 作家名:夏野