そういうわけなので彼女にはさわらないでいただきたい。
9
『まったく、静緒は警戒心がなさすぎるぞ!』
あれよあれよと言う間に連れてこられた新羅とセルティの愛の巣で、静緒は何故か正座させられていた。
とりあえず風呂に入れとひんむかれて、その間に買ってきたのだろう新品の下着とスェットを着せられて。
静緒としても変態が触ったものなんてごめんだったので嬉しくはあったのだが…それにしても仕事が早過ぎだろ、とツッこむ暇もない。
とりあえず座りなさい、と命令されて床に正座する。
いつもはにやにやしている新羅さえも思うところがあるのか、茶化さずに黙ったままだ(相変わらずにやにやはしていたが)。
「知らなかったんだよ…」
「そういう話じゃないだろう。仮にも君は女性であるわけだから。恐い目にあってわかっただろう?」
『臨也が来ていなかったら、どんなことになっていたか…考えるだけで恐い』
「俺だって…臨也には感謝してるし…」
こんな事想像もしなかった。犬猿の仲である臨也に心から感謝する日がくるなんて。
今度一度、メシでも奢ってやろう。それでチャラとは言わないけれど、感謝を表したって良いはずだ。
うんうんと頷く女子2人を見ながら、あ、と新羅が声を上げる。
「それにしてもさ、なんで臨也、静緒の部屋に入ったのかな」
普通に考えて、臨也とはいえ危険なタイミングがわかるとかおかしくない?
あとはもう仕組んだか盗聴器を仕掛けたかあとは覗いてたとかそんなふうにしか…
「あ」
『あ』
凍った空気のなか、玄関のドアが開けられる。
「お邪魔するよー!シズちゃん大丈夫!?どうし…」
「いいいいざあああああやああああああああっ!!!」
そこから先は、いつも通りだ。
作品名:そういうわけなので彼女にはさわらないでいただきたい。 作家名:佐藤