裏表ラバーズ
こういうとき、善弥は男らしい割に子供っぽいと姫谷は思う。
だから、ふっと口の端を緩めて、
「ありがたく、頂戴します」
と、それを受け取った。
革の手袋ならば、いつも自分が身につけていられる。そういうものを、善弥は選びたかったのだろう。そう思ってくれたことが妙に嬉しくて。
「よし」
善弥はひどく満足そうだ。しかし、その次の発言はとても善弥らしいもので。
「だからー、今年のクリスマスは俺と過ごすことー!!」
12月25日のクリスマスが善弥の誕生日だ。つまり、自分の誕生日を祝えと暗に言っているのだろう。
「分かりました。特製の料理を作ってケーキも用意します」
「ホント〜? ケーキはねー、クリスマス用とバースデー用、ふたつじゃないとヤだからねー」
善弥はどちらか一方を選べと言われたら、我が侭を通してどちらも手に入れる。そして、自分の誕生日とクリスマスと一緒に祝われてしまうことを嫌う。だから、クリスマスもケーキは二つ用意するのが通例だった。
「もちろん、坊ちゃんのお好きなものを用意させて頂きますよ」
「ふふ〜」
他人の誕生日を祝うということを、善弥がしてみたかったのだとそこで姫谷は気づく。
「あのね、おいしいスイーツのお店があるんだって。そこでケーキ食べて帰ろう」
甘いものは、正直苦手だ。だが、その提案を、快く姫谷は受け止めた。