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追憶の檻

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────たすけて、


 声にならない叫びは、水中で叫んだように音にならぬまま泡と消えた。

 薄い錦糸の髪が、僕の指から離れて行った。


──たすけて、×××。


 黙りこくって仮面の表情でこちらを見る、その湖面のような瞳が、天の光を受け紅く揺れた。
 けれど、その手を伸ばしてはくれない。
 首に嵌められた枷が、弱り切ったこの体を重力に逆らって引き上げる。
 息が詰まる、喉が潰れてしまう。

『こ×さないでください、×ろさないでください、××さないでください』

 僕を、壊さないで。
 大切なものを、壊さないで。
 僕はなんでもするから、僕は言うことを聞くから。

 けれども声は、どこにも届きはしない。
 次から次へと砕かれてゆく墓、碑、そして人。

 僕の体は消えかけて、僕の上司は全員死んだ。



作品名:追憶の檻 作家名:克明