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体はシチューで出来ている

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「リオウくん、坊ちゃんはね、あなたがここに来るのをいつもとても楽しみにしていらっしゃるんです。シチューを食べ終えたあとはいつもそわそわとして──今回なんてしばらくあなたが顔を見せないものだから、ふふ、本当に拗ねてしまってもう、大変だったんですから」
「グレミオ、」
 ほんのりと頬を染めて、俯いたままティエルは従者を睨んだ。堪えた様子もなく小さな主の頭を撫ぜて、グレミオはやさしく微笑む。
「リオウくん、ナナミさん、フッチくん──ルックくんも、聴こえているんでしょう? 坊ちゃんのこと、よろしくお願いしますね」
「グレミオ。僕はもう子供ではないのだけれど」
 そう言って普段は変わらぬ表情をほんの少し歪めて拗ねたように呟くさまは、外見相応の子供のようで──何となく遠くに感じていた存在が近く思えて──リオウは小さく声を上げて笑った。

「ただいまー!」
 元気良く姿見から飛び出してくるリオウを、通りすがりにフリックが見やる。溶けるように鏡が揺らぎ、後ろにティエルが姿を現した。ナナミたちもそれに続く。
「おう、帰ったか。──ティエル、何をそんなに拗ねてるんだ」
「拗ねてなんかいない」
 恨めしげに睨むティエルの頭を、フリックはバンダナごと乱暴に掻き回した。
「ちゃんと素直に言ったか? リオウ、凹んでたぞ」
「おまえには教えない」
「あのな……。まあ、リオウを見れば判るけどな」
 そうしてリオウへと視線を移す。ムクムクを頬に張り付かせながら、件の少年は満面の笑みを浮かべた。
「フリックさんには教えてあげません!」
「……なんでそんなとこばっかりティエルに似るかね」
 呆れたように嘆息するフリックに、リオウとティエルは顔を見合わせ──
「グレミオのシチューを食べたから」
「グレミオさんのシチューを食べたから!」
 そう声をはもらせた。

「なんだそれ」
 そうして駆け出してゆく彼らを見送りながら首を傾げるフリックに、フッチは微笑んで言い添える。
「体はシチューで出来ているのだそうですよ」
 ますます判らないというように頭部を掻いて、フリックはけれど眩しげに目を細め笑った。何にしろ二人が楽しげに笑い合っている──それならば良いのだと。
作品名:体はシチューで出来ている 作家名:lynx