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Happy barthday

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「ぶはっ!ハッピバースデー・・・あだだだだっ!」
「何してるの、あなた。その歌は、カイトが嫌がるから駄目だって」
「いいから聞け!」

俺の剣幕に驚いたのか、カイトが動きを止めた。
その手をつかんだまま、ゆっくりと歌う。

「ハッピバースデー ディア カイトー
ハッピバースデー トゥー ユー」

そっと手を離すと、震えているカイトの頭を撫でて、

「大丈夫だよ、カイト。この歌を歌っても、お前は、どこにも行かないよな?この歌のせいじゃない。お前が歌ったからじゃない。お前は、なんにも悪くないよ、カイト」

俺の言葉に、カイトが目を見開いた。

「お前をどこにもやらない。ずっと、ここにいていいんだよ。カイトは、家族なんだから」

カイトが、口を開く。
けれど、そこから声が出ることはなく。
代わりに、見開かれた目から、涙がこぼれ落ちた。

「大丈夫だよ、カイト。大丈夫だから」

ぽろぽろと涙をこぼすカイトを、そっと抱きしめる。
騒ぎを聞きつけたのか、娘が出てきて、呆れたようにこっちを見ていた。





「行ってきまー・・・ぎゃふっ!」

声をかけた瞬間、いつも通りに体当たりを食らう。
よろけながらも、何とか踏みとどまった。

「カーイト、仕事行ってくっから、いい子で待ってろよ」


相変わらず、カイトの声は出ないけれど。
相変わらず、我が家で、ハッピーバースデーの歌は歌われないけれど。

以前ほど、カイトは、留守番を嫌がらなくなった。


カイトは、一度腕に力を込めて抱きつくと、体を離す。
その様子を見ていた女房が、

「あら、最近のカイトは、聞き分けいいのね」
「うーん、あんまり聞き分けいいのも、寂しいなあ。パパ、仕事行きたくないぞー!」
「じゃあ、ママも行きたくなーい!」

女房と二人、カイトに抱きついていたら、

「・・・ばっかじゃないの?」

娘が、冷ややかな視線を送ってきた。

「何だ、焼きもちか?」
「ママが、ちゅーしてあげようか?」
「妬いてないしいらない!行ってきます!!」

勢いよく玄関を開けて、娘が飛び出していく。

「じゃあ、カイト、行ってくるからな。留守番、頼んだぞ」

俺の言葉に、カイトは、にっこりと笑った。



終わり