さあ、悲劇的なレンアイを
「臨也?おーい、起きてるかい」
「・・・!!お、きてる!!」
深い思考に入りこみそうになったからか、新羅が目の前に来るまでまったく気がつかなかった
不思議そうな顔で俺を覗き込む新羅
その眼鏡に自分の顔が映ったのを視認し、どくりと胸が高鳴った
なんか、ヤバい
「え、なんでそんな挙動不審に・・・」
「なんでもない!帰る!お金は口座から引き落としていいから!」
「あ、うん。お大事に~」
急いでマンションを後にして、エレベーターに乗り込む
今のはなんだ?
俺のコイビトはシズちゃんで新羅は腐れ縁のセルティ大好きな変態・・・うん、そう、そうだよ
だから俺が胸を高鳴らせるのはシズちゃん
一息吐いて顔を上げ、エレベーターの奥に設置してある鏡を見て、愕然とした
「ハッ・・・ハハッ・・・」
なんで?
頭の中が真っ白になって、哂いが零れた
なんで?どうして?
幼い子供が母親に問いかけるような言葉しか思い浮かばない
何故
俺の頬は紅潮しているんだ?
混乱しながらも客観的に物事を見ていた自分が答えを出している
そしてその答えは、絶望しかくれなかった
「ハッ・・・アハハハハハッハハハハハッ!!アハハハハッッ!!」
バンッバンッガンッガンッパキンッバリッバキッダンッダンッ
鏡を何度も何度も何度も何度も殴りつける
笑ってないて嗤って泣いて鳴いて哂ってわらってナイテ
笑ってないて嗤って泣いて鳴いて哂ってわらってナイテ
笑ってないて嗤って泣いて鳴いて哂ってわらってナイテ
殴って割って殴って割って殴って壊して
殴って割って殴って割って殴って壊して
殴って割って殴って割って殴って壊して
鏡にはヒビが入り、鮮血に染まり崩れ壊れるのと一緒に、何かがコワれだす
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
ど う し て !!!
どうして・・・どうしてコンナモノにっ
「気付いたんだ・・・っっっ」
ずるずると拳を鏡に叩き付けたまま膝を床につける
嗚呼
どうして
「え・・・臨也!?」
エレベーターの扉が開き、使おうとしていたらしい新羅が目を開いてこちらを見下ろしている
焦りと驚きと心配が綯い交ぜになった表情
それが今
自分にだけ向けられているという事実に
酷く悦びを感じさせたと告げれば
君はどんな顔を見せてくれるだろうか
【気付いたのは酷く歪んだアイ】
ねえもっと
もっともっともっともっともっと沢山傷ついたら
君は俺だけを、ミてくれる?
作品名:さあ、悲劇的なレンアイを 作家名:灰青