ビーンカード・ウォーズ
「俺も」「私も」「僕たちもです」
全員の同意の上での芝居だったのか。
見上げれば政春が気まずそうに目を伏せた。明良も思わず顔を伏せる。
愕然とした。今まで政春をフッてきた彼女たちと、これでは何一つ変わらない。
自分勝手なイメージを政春に押し付けて、そこから少しでも逸れたら否定して、本当を見ようとも思わない。
そんな彼女たちを、散々心のうちでは否定してきたはずなのに。
「……、ごめ、ごめん、ゴメン政春、俺、」
政春はちゃんと、俺の知ってる、バカだけどちゃんと他人のこと考えてて、バカだからバカみたいに優しい政春だったのに。
「え!?いやっつーか俺もいきなり怒鳴って悪かったっつーか、確かに豆腐はもったいねーっつか、」
「マサぁーしっかりー!」
「うるっせぇ!シバくぞ!!」
残っていたのだろう豆腐を持ち上げ構える政春に、一息でまた下界は騒がしくなる。
「きゃぁー!」
「政春酷ぇ!!」
「ふはは覚悟しろ愚民どもっ!!……ぁ」
頭からもろに降り落ちた豆腐の塊に明良の血管がブチ切れるのは、そう遠い未来の話では、ない。
作品名:ビーンカード・ウォーズ 作家名:梵ジョー