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オチない来神SSSS!!

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1。来神組



 ふと自分の名前を呼ばれた気がして本の中に沈ませていた意識を浮上させて横を見ると、眉間に皺を刻んだ、苛立っているような困っているような複雑な顔をした同級生の姿があった。
 門田は栞を挟み、ぱたりと両手で本を閉じた。

 「静雄。どうした?」
 「・・・これ、解読してくれねぇか」

 ずい、と目の前に挿し出されたそれを門田は指先でつまみあげ、そして両手で持ち直した。
 まず、それは短冊型の黒い紙だった。
 そしてそれに赤くて細いペンで何か、おそらく文字が書かれてある。読みにくいうえに、この上ない悪意を感じる仕上がりとなっていた。

 「学校に来たら机の上に黒い封筒がおいてあってよ、とりあえず開けてみたんだが・・・・これ、」
 「・・・・・・・・」

 99.9%犯人であろう一人の人間に思いを馳せ、静雄は自分で勝手にぴしりと血管を浮かせた。門田は静雄が切れない内にと赤ペンで書かれた内容に取り掛かる。
 まず黒い紙に赤いペンという読みにくさもあるが、流麗な筆記体で書かれていたのが静雄が読めなかった理由だろう。静雄が尋ねられる人間すらも解読できなかったら意味がないので英文だろうと決めつける。そういえば今までだったらその黒い封筒を見つけた時点で追いかけて行ってもよさそうなものだが、いやむしろこの紙を引きちぎってもおかしくないのだが、成長、したのだろうか。彼が今まで数度巻き込まれた喧嘩の場面が頭をよぎり、お前も成長したのだなと静雄の肩の一つでもたたきたくなったが目の前の文章がそうさせてくれなかった。

 「・・・・・・・・」
 「どうした門田?」

 門田は内心頭を抱えつつ、静雄の仇敵である彼の同級生を思い描いて、思った。お前も少しは成長しろ、と。
 しかしここで変に話題を変えようとしたり嘘を教えるとややこしいことになる。彼は渋い顔をしつつ自分の筆箱からシャープペンシル、ファイルの中からルーズリーフを一枚取り出して、さらさらと何かを書きつけ、先程の黒い紙と一緒に静雄に渡した。目線はすでに「俺は関係ない」といっている。
 静雄はそれを受け取り、しばらくルーズリーフに書かれた文字を読み、読み直し、再度読み直して、大きく息を吸った。

 「のぉおおぉんみぃぃいいむぅしぃぃぃいいいい!!!!」

 ハリケーンが音を立てて走り去って行った。



                            ♂ + ♂ + ♂ + ♂


 「くるね」
 「くるねぇ」

 獣の咆哮を聞いて、ナイフを危なげもなく器用にジャグリングさせながら臨也が静かに笑い、そこから少し離れた場所で新羅が楽しそうに笑顔でいった。少し前まで雨の降っていた外は湿った空気で、雲の隙間に綺麗に天使の梯子がつくられている。屋上のコンクリートも少しばかり湿っていたが二人はそんなことはお構いなしに笑いながら会話を続けた。

 「でもシズちゃんもこれぐらいでもすぐキレるんだから面白いなぁ。これだけブチ切れてたらそろそろ血管がいかれてしぬんじゃないかと思うんだけどねぇ。もしかして血管もシズちゃん級だとか?うわぁ気持ち悪い、早くしねばいいのに」
 「うーん骨や筋肉が発達してるから、血管、血管ねぇ・・・あり得ない話じゃあないかもね。僕もその点については長年疑問に思ってるんだよ。いやあ本当解剖させてくれないかなぁ彼!」
 「ここかぁあいぃいいぃいいいざぁあぁああやあああああああ!!!」

 約一週間前に取り付けられることを諦められたドアがあった場所に静雄が跳び出してきた。やぁ!と臨也は軽く首を傾けながら片手を挙げ、人のよさそうな笑みを取り繕う。

 「どうしたのシズちゃん?俺に何か用?わざわざこんなところまでゴクロウサマー」
 「俺には平和島静雄って名前があるってったら何度いったらわかんだノミ蟲よぉ!それにこれはなんのつもりなんだよ!」

 野球のボールより早く投げつけられた紙の塊が臨也の斜め上のフェンスにあたって跳ね返る。新羅がそれを拾ってくしゃくしゃの状態だったのを開き、やっぱり読めなかったかーと笑顔でいって静雄に睨まれ、黙った。

 「何?なんで最初から俺って決めつけてんの?もしかしてシズちゃんのことがだーいすきな女の子からかもしれないじゃない。・・・まぁ、俺だけど」
 「っ、だ・か・ら・・・・俺はなぁ・・・・・・!」

 ぎっと新羅に向けていた目を臨也に戻し、静雄はいった。



 「テメェと心中する気なんぞねぇっつってんだよ臨也君よォ!!」



作品名:オチない来神SSSS!! 作家名:草葉恭狸