オチない来神SSSS!!
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
臨也が半目で静雄を見、新羅がもう一度手元に持ってあった紙を確認した。
「・・・えーと、新羅、もしかしてドタチンが間違って書いちゃったとか?」
「うーん日本語には訳してないけど丁寧にはっきりと書かれてあるよ。ちなみに君のも彼のもスペルミスはなし」
「ということはシズちゃんかぁ。君は本当に俺の予想を超えるねぇ」
はぁ、と腕を肩の高さまで上げてため息を吐く臨也を見て静雄はまた血管を顔に浮かせながらも、戸惑った様子で新羅を見る。
「え、なんだ、『果て』ってしぬって意味だろ?それなら」
「・・・・・・果て、はて、かぁ」
「・・・・・・あー、なるほど」
新羅と臨也は二人で遠い目をして、お互いの視線を絡ませて頷き、静雄に近づいて行った。
「な、なんだよ」
「うん、静雄。英語の時間だよ。まず」
「新羅、俺だって英語ぐらい読めんだよ。だから、これはアイ、エッチ、エイ、ティー、イー・・・」
「いやいやアルファベットは別にいいんだよシズちゃん。とりあえず君はこれをローマ字読みしたんだろ?」
「おう」
ごく普通に頷いた静雄に対し二人は思い思いに呆れ、それから更に不安になっている静雄に問いかける。
「じゃあさ、なんで最初のアイはアイって読んだんだよ。ローマ字読みなら普通イ、だろ?」
「あぁ。でも文の最初に来てたらアイって読むんだっていってたじゃねぇか」
静雄の答えに再び二人は遠い目をした。
「・・・あぁ、そっか、中学は義務教育だからどれだけ馬鹿でも許されるのか・・・・」
「おいノミ蟲どういう意味だ」
「ごめん静雄、私があのまま君と一緒の中学にいってればここまでは・・・・!」
「あぁ?テメェがいなくても大丈夫だったぞ。途中までは、その、先輩が勉強教えてくれてたしな・・・英語は苦手だっつって教えてくれなかったけど・・・・」
名前も顔も知らない先輩さん、貴方はこいつに最初の一学期分だけでも英語を教えるべきでした。それともこいつが忘れているだけでしょうか?
「よしシズちゃん」
「・・・何だ」
「まず誤解を解こう。これはね、ローマ字じゃなくて英文だよ」
「えっ」
静雄がぎょっと目を見開いたが、すぐ二人の生温かい視線に気づいてぶるぶると首を振った。
「あぁ、まぁ、そうだよな、それが普通だよな。俺もノミ蟲にブチ切れててよぉちょっと飛んじまってたんだな。だから俺は暴力が嫌いなんだよそういうわけだから臨也殺す」
「ちょっと軽く人に責任押し付けてついでに語尾に不穏分子つけないでくれる?まぁこれでシズちゃんも意味がわかるでしょ?」
ほら、と紙を広げる新羅を親指でさして、臨也は急がず焦らず静かに歩いて屋上から去って行った。
静雄はしばらく紙を眺め、はぁ、と息をつき、それからくるりと階下へと続く階段がある方へと向き直り、
「ぃぃいいいいいざぁああやぁああああぁぁぁああ!!!!!」
脚で床を破壊してしまうのではないかというほどの勢いで臨也を追って行った。
新羅はそれを目だけで送り届け、己の未来の恋人の母国に近しい言葉を友人が覚えていないのはどうだろうかと考えて今度の高校始まってのテスト前には自ら彼の英語教師に名乗り出ようとひそかに決心し、ぴらりと持っていたルーズリーフと黒い紙を自分の方へ向けた。
「でも、これ、ほんとよく間違えたねぇ・・・・」
『シズちゃんなんかきらいだよーっだ!』
『安心しろ、俺もテメェが大嫌いだぁあぁぁあああ!!!』
校庭に戦場を移したらしい二人の声が、屋上まで響いていた。
[ I hate you ! あい はて よう ! ]
作品名:オチない来神SSSS!! 作家名:草葉恭狸