オチない来神SSSS!!
７。来神組―β
≫キレた静雄ＶＳ新羅
「ちょっ静雄ごめんっごめんってば何そのダブルデコピン人差し指と中指でダブルでお得しかも両手で二乗にお得とかそれお得じゃないからね全然違うからね大損だからねしかもデコピンなのにおでこ狙いじゃなくて眼鏡だからねそれ君が狙ってるの何だい物だから大丈夫って思ってるのかいあのねぇ僕は小学生の時から眼鏡をかけていただろう眼鏡をかけている人にはわかるだろうけれどつまり君はわからないだろうけれど眼鏡は身体の一部なんだよ私はその歴が半端じゃないんだかね身体と同じように傷つくんだからねしかも眼鏡が傷ついたら俺の本体にも被害が及ぶってわかってるよね絶対わかってるよね静ｯｯｯｯ」
≫キレた臨也ＶＳ新羅
「よし、臨也、空気を吸おう、落ち着いて考えるんだ、君は静雄と違うんだろう？沸点もあそこまで低くないし冷静に考えられる人間なんだろう？ね？ちょっとそこに座ってさ、ほら、僕とゆっくり話し合おうじゃないか。え？いやぁその間に逃げる魂胆なんてないよ全くないよ全然ないよ僕の未来の花嫁のセルティに誓……………、……うん、ない、ないよ、ないからさぁだからないってあぁっちょっと一般人にナイフ向けるのは危ないよ危なさすぎるよすっごく危ないよ臨也、ね、それを降ろそう？ほら俺を見てよこの両手を上げたポーズ、全世界共通の降参のポーズだろう？えっ？た、確かに静雄もそれやってもきいてくれないけどさねぇ人にやられて嫌だったことは他の人にもやっちゃいけないでしょうねぇ臨也やめようやめようってば、あぁ、ありがとう、それじゃあ・・・ってその指は何かな何で僕は近づかれてるのかな君も眼鏡に傷を負わせる気かい臨也君だけは眼鏡族の気持ちがわかるって信じていたのにあっちょっそれ以上近づいたら指紋がっ……あ゛―――――――ッ!!!!!!!!!」
≫キレた新羅ＶＳ静雄＋臨也（＋ドタチン）
妙に上機嫌の新羅に突然「うちの家で晩御飯でも食べないかい？」と呼び出された門田はと彼の家に向かっていた。新羅が臨也の携帯からわざわざかけてきたのが不思議だったが、きっと既に他の二人は揃っているのだろう。何も持たないまま家に邪魔するのも悪いと思い、サイダーと林檎ジュースのペットボトルを一本ずつ購入してから改めて彼の家に足を向ける。
インターホンを押すとまた明るい新羅の声で「あいてるからどうぞ！鍵は閉めといてくれないかい？」と返事があり、――その代わり普段なら聞こえてくる他の二人の喧嘩染みた声が全く聞こえず、門田は珍しいこともあるものだと首を横にひねりながらがちゃりと扉を開け、奇妙なものを見て、聞いた。
「あッ」
「し・ず・お？」
こちらをむいてがたりと立ちあがった静雄に新羅がにっこり微笑んでいる。そしてそのままの状態で「鍵、閉めてくれるかい？」ともう一度門田にいった。
門田は、二人を見ながら、後ろ手に鍵を閉めた。
「―――――――ックソ！」
「あはははははシズちゃん一人で逃げようとするからだよざまあみろ、俺がそこにいたらさっさとドタチン押しのけて逃げてるのにねぇとっろいなぁシズちゃんトロすぎるよ君それ飲むのに何分かかってるんだよ俺だったら即行飲みほしてるよ一気飲みでもいいぐらいだよってことで交代しようシズちゃ「いーざーやー？」
静雄を見たまま、それでも先程から全く変わらない笑顔で新羅が臨也を呼ぶ。
門田は前に進みながらきょろきょろと辺りを見渡し、ぴたりと止まった声の発生地を見つけた。キッチンだ。
そして、臨也がこちらを振り向かずに小さな声で言った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・助けて」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
震える小さな背中から視線を外し、今度は椅子に力尽きたように座ったまま一ミリも動かない目の前の男を眺めた。
「・・・・・・勘弁してくれ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そして彼の目の前に置かれているものを見て色々察した門田は、今度はその向こう側に座っている笑顔を全く絶やさない男を見た。
「いやー今日の晩御飯をこの三人で食べることになったんだけれど、ちょっとメインディッシュのを多く買いすぎちゃってさ！それで他の人も呼ぼうかってことになったんだけど」
「・・・・・・・そうか」
「あはは、やっぱり魚屋さんのおじさんと話すとダメだねぇ、向こうも喋りのプロだからさ、どんどん買っちゃって」
「・・・・・・・・・・・・・・・・魚」
「そう！魚！しかも聞いてくれるかい門田君、切り身じゃないんだよ魚屋さんでは当たり前かもしれないけど！スーパーだと切り身がやっぱり多いからねそっちの方が鮮度が落ちるからいけないね！」
「・・・・・・・・・・・・・そうだな」
「それで臨也につくってもらってるんだよ。ほら、臨也って料理上手じゃないか。焼き魚とか煮魚とか刺身とか色々つくってくれるんだろうなー楽しみだなー。あっ、ごはんはもう既に炊いてるから心配しないでよ、あとは魚料理ができればいいだけだからね！ 魚 料 理 が 出 来 れ ば 」
門田は少し間をおいてゆっくりとキッチンにいる人影をふりむき、そして何もなかったかのように新羅に視線を戻した。
「で、客人に何も飲まさないっていうのも何だからね、帰りにコンビニによって飲みモノをかったんだよ」
「・・・・・・ほう」
「それでさぁ晩御飯は臨也がつくるからもしかしたら静雄が俺は食べないとか言い出すかもしれないじゃない」
「・・・・・・・・・・・・・・かもな」
「でもあいにく彼の作る料理以外は今日はないからさぁ、少しでも飲みモノで腹を膨らましてもらおうと静雄には丸々一本買ってあげたんだけどね、 ブ ラ ッ ク コ ー ヒ ー を」
ちらりと門田は静雄の前に置かれている家庭用の１L入りのボトルを見た。どれだけ多く見積もっても三センチほどしか減っていない。
それをしばらく眺めて、彼はごとりと自分が買ってきたものを机の上においた。
「新羅、せっかく晩御飯に呼ばれたのに何も持ってこないのも悪いと思って、飲みもん買ってきたんだが」
ぴくりと静雄の身体が「のみもの」に反応して動く。
「ええ～そんな、別に気にしなくてもよかったのにー」
「いや、人様の家に邪魔するのに何も持っていかないってのは」
「のみもの・・・？」
すう、と静雄が顔をあげる。そして門田がビニル袋から取り出したものに目を見開いた。
「なぁ新羅俺こっちのんでも」
「いいよ？」
作品名：オチない来神SSSS!! 作家名：草葉恭狸