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Snowdome

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――それは、咽かえすような鉄の臭い。



ゆるゆると目覚めると、それに伴って嘔吐感が込み上げる。
慌てて抑えようと翳した掌は、鮮血。
痛みが全く感じられないということは、他人の血。
首筋が一気に冷える。

「ボクじゃない、ボクじゃない、ボクじゃないっ・・・」

現実を認めたくないから、目線はまだ下を向いたまま。

「ハレルヤッ!・・・ハレルヤッ!!」

半ば悲鳴にも似た声で名を叫ぶと、ゆらりと傍らに人の温もりが浮かび上がる。
安堵した拍子に上げた視線の先には、既に息絶えているであろう人の形をしたものが数体。
鮮血の中に横たわるその光景に、再び嘔吐感に襲われた。

「ハレルヤ・・・・・・、ハレルヤ・・・・・・」

寝言のように繰り返す言葉に、ハレルヤと呼ばれた少年はどうした?と短く問うた。
けれども、その問いに答えるべき少年は、俯いたままただハレルヤと名前を繰り返すばかり。

「どうしてほしい?・・・お前の願いはなんだ?」

震える少年の肩を抱きながら、ハレルヤは囁くように言葉を継ぐ。

「お前の願いを言え。・・・オレがそれを全て叶えてやる」
「・・・ボクの・・・願い?」

恐る恐る面を上げると、まるで鏡で映したように同じ容姿をした少年、ハレルヤと目が合った。
冷たくて、それでいて温かい金色の瞳に魅入られる。


作品名:Snowdome 作家名:マメゾー