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クラウ×フロワード

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ノア・エン嬢は話の都合上存在しません!


いけすかねぇ野郎だ。
クラウのフロワードに対する第一印象はこんなものだ。
思った以上に根暗だとか、思った以上に使える人材だとか、そもそも野郎ではないがでも野郎で十分だとか、いろいろ考えることはあるけれど。時間の経った今でも第一印象とさほど変わらない印象を持っている。

フロワードもクラウに対する第一印象から今までの印象にさほど差はない。
頭の軽量化に成功している、シオンの心許せる人物。戦いにおいては普段からは想像もできない指示を下し、自らも絶大な強さを誇る人物。それがフロワードのクラウに対する印象である。

さて、二人は今、友好国主催の非公式なパーティーにきている。
非公式と言っても外交が全く絡まない訳ではない。王であるシオン自らが出席するほどではないが、シオンの側近であるクラウやフロワードが顔を出す必要はある程度。
誰かが出席することに関し、二人は積極的だった。しかしシオンから二人でいけと言われ、二人はあまり積極的でなくなった。
「仲良くしろとは言わないが、それなりに会話が出来る程度にはなってくれ」
二人の仲の悪さを判断して二人を指名したのか、それとも単に女性であるフロワードと男性の誰かをつければ見栄えもすると思ったのか。それは分からないが、正直二人は嫌がった。
「でも僕と先輩が行っても華がないし、僕とフロワード中将が行っても釣り合いがとれませんよ」
童顔女顔のカルネが苦笑していった。
「私に華があるようには思えないんですが・・・」
自分の黒ずくめの服を摘んでフロワードがぼやいた。
「大丈夫ですよ!女性は化粧と衣服で変わるんです!」
「失礼だろカルネ・・・」
熟女にしか興味のないカルネのボケに、シオンはあきれてツッコんだ。

何はともあれ二人は今パーティーに来ている。クラウもフロワードも華やかに着飾って、いつもより近い距離で立食形式のパーティーを堪能する。
「お前も女だったんだっけか・・・」
着飾ったフロワードを見てクラウが言った一言。フロワードの性格上特に何も感じなかったのは救いである。
フロワードはいつもの黒い服ではなく、華やかな桃色のドレスを着てパープルの髪飾りで髪をゆわいている。スリットの入った下半身部は美脚を全面に出し、胸の開いた上半身部は普段は厚着で隠れている豊かな乳房を強調している。
しかしクラウは何も感じなかった。
「こんな美女が中将殿とは・・・しかも元帥殿も美男ときている。ローランドは人材豊かなのですね」
気品のある婦人が茶目っ気を出して言った。
「ローランドは英雄王もお若くて美しい。流石はローランド」
こういった場面に慣れているフロワードはうまくかわすが、クラウはどうだろうと横目で彼をみる。
クラウもやはり場慣れしていて、年下の娘を口説いたりしていた。粗相をしていないことに満足し、目を離す。
目を離して、胸の内がもやっとした。
「・・・?」
フロワードはワインをぐっと呷った。

パーティーが終わり、二人があてがわれた部屋へ移動する。
「あー疲れたー」
クラウはフロワードと二人きりになると、早速衣服を着崩す。
「元帥閣下。だらしがありませんよ」
「うるせーなー。いいだろ二人きりなんだからよ」
鬱陶しそうにクラウが言った。
フロワードは溜息をつく。
「予定通り、出立は明朝。よろしいですね。私は先に風呂に入ってきますから」
この国には伝統的に銭湯が多い。ローランドでも湯浴びは日常に組み込まれているが、なお盛んなこの国独自の湯があると聞き、パーティーの主催者に勧められていた。
「あぁ。じゃ、俺お前が出てから入るから」
ソファに横になるクラウに、フロワードはあきれてドアを閉めた。

風呂場では屋敷の女主人の貴婦人がいた。
どうやらこの国は大勢で湯浴びを行うらしい。驚いたフロワードが退出しようとしたが、女主人は全力で止めた。
「早速だから入って。一緒に入りましょう」
友好的な誘いに迷うが、フロワードは了承した。これも仕事の一部である。
女主人はフロワードの肢体を眺め一通り誉めた後湯に浸かる。
フロワードも身体を荒い終え湯に浸かると、女主人が見計らったようにトンデモ発言をかました。
「元帥閣下と中将閣下は恋人同士でらっしゃるの?」
フロワードは大きく首を振った。
「ちがいます」
あんな単細胞勘弁してもらいたい。
別に男性に対する興味などミジンコほどもないフロワードは否定した。
しかし女主人はそれを否定とは受け取らなかった。
「まぁまぁ。そんなに恥ずかしがらないで良いのよ?美男美女、お似合いだと思うわ。仕事もいいけど、恋いもいいものよ」
「はぁ・・・」
女主人の妄想は止まらず、しばらく湯に浸かりながら恋について聞かされたのだった。

フロワードが部屋に戻ると、単細胞がアホ面かましてソファに横になっていた。
思わず蹴飛ばしてやると、ミジンコ頭は目を覚ます。
「・・・あ?フロワード、出たのか」
「えぇ。ですからお次にどうぞ」
ソファから落ちてしまった体を起こし、大きな欠伸をしてクラウは頷いた。
「あー・・・じゃ、入ってくるから」
「どうぞ」
一生戻ってこなくて良いと思いつつ、フロワードはベッドに腰掛ける。
(そういえば、寝室はどこだかまだ案内されていない。誰かに聞かなくては)
フロワードは屋敷のメイドを呼び、寝室はどこかを訪ねた。
「ローランドのお客様は、二人ともこのお部屋と聞き及んでおりますが・・・」
呆気にとられ、フロワードは女主人との面会を要請した。
すぐに女主人の書室へと案内され、そこで彼女はにっこり笑っていった。
「あら、一つで十分ですわよね?そんなに恥ずかしがることないんですのよ?旅行先で愛を確かめあうのも恋人の基本でしょう?」
流石にその言葉には目眩を感じた。
フロワードはたくさんの言葉を重ねて、クラウとは本当に何の関係もない信じてくださいということを伝えたが、面白がった女主人は取り合わなかった。
これ以上は何を言っても無駄。フロワードはそう思い、とぼとぼと部屋に戻る。
仕方ないのでクラウはソファに寝かせよう。そう思い、部屋の扉を開ける。
しかし思い通りに行かないもので、既に馬鹿が簡易な服を着て腹を出してベッドに寝ている。蹴り飛ばしてベッドから落とそうとするが、なかなか簡単に落ちてくれない。殺気立ってしまっているのか寝相で蹴りを避けてくる。憤慨して両手でクラウの身体を押すが、逆にクラウに手を掴まれた。
「!?」
クラウはフロワードを引っ張り、ベッドへ引きずり込む。そのままフロワードを胸に抱くと髪に顔を埋めてすやすやと寝息をたてる。
「!!??」
腕の中でもがき手足をバタつかせるが、クラウは一向に目覚める様子もない。むしろ強い力で抱きしめられているのであまり身動きがとれず苦しい。
(や、闇よ・・・っという訳にもいかない・・・)
思わず指輪の力を解放しそうになるが、何とか思いとどまる。
万策尽きたととうとうやけっぱちになり、フロワードは目を閉じた。
すると睡魔は直ぐにやってきた。暖かい腕の中はそれなりに心地よく眠気を誘った。
フロワードの意識は暗く沈んでいった。


(・・・なんか、柔らかい・・・)
作品名:クラウ×フロワード 作家名:ハクヨウ