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クラウ×フロワード

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微睡みの中にいるクラウ。顔と手に柔らかいものがある。
手はその感触を確かめるため二・三度動かす。体を動かしていると意識も段々覚醒してきた。
目を開けて、体を起こし、寝ぼけ眼をパチパチし、ようやく気づく。
クラウは顔を真っ青にした後、自分が何を掴んでいるか気づき真っ赤になった。
自分はフロワードを押し倒しており、顔や手に当たっていた柔らかいものは乳房であった。
「っ〜〜〜〜〜!!!!????」
声にならない大きな悲鳴が、屋敷中を響きわたった。


「では、本当に何にもなかったですのね?」
「えぇ、お騒がせいたしました。彼が寝ぼけて騒がしい真似をしてしまったようで・・・」
大きな声を聞きつけた兵士達に、何もないと説明したのはフロワードだ。珍しく青筋を浮かべ、しかしいつも通り読めない微笑を張り付けて言う。
「賊の類でもありませんし、彼は朝が弱いだけなのです。大変失礼いたしました」
「まぁ。では今後大変ですわね」
心底心配そうな女主人に、もうどうだって良いとフロワードは乾いた笑い声をあげた。どうせ会うことはもう二度とあるまい。勘違いしたままで結構。
・・・もう二度と会わないと思いたい。
「それでは私たちはこれでお暇します。楽しい一日を有り難う御座いました」
「いえいえ、若いお二人にそういっていただけると、こちらも冥利に尽きますわ」
女主人に頭を下げ、馬車は走り出した。
かくして、クラウとフロワードの一泊二日のパーティーは幕を閉じた。


ちなみに、馬車の中の二人はずっと黙っていた。
(胸・・・でけぇなぁ。柔らかいし・・・こうやって黙ってれば良い女なんだなぁ・・・)
(・・・人と共に寝るなんて・・・あの醜いお父様の時とは全く違う・・・頼りがいのある力強い腕ですし・・・)
二人はちらりとお互いの顔を見ようとした。
一瞬目があってしまい、二人は素早く目を逸らした。
二人がローランドへ到着する間で、気まずい空気はしばらく続いた。




2
「先輩?」
「あー」
「先輩!」
「んー」
「先輩ったら!」
「うわ!?」
クラウは大きな声に驚き、後輩の顔を見る。
「何突然大きな声出してんだよ」
「突然じゃありませんよ!ずっと呼んでました!」
可愛い顔を怒らせてカルネは言う。
「もー、最近先輩変ですよ?なんだか上の空だし。何か悩みでも・・・ってんな訳ないか・・・」
「っておい!」
「え、だって単細胞の先輩の悩みなんて、女性関係くらいでしょ?」
「そりゃてめぇの悩みだろ・・・」
人妻好きのカルネにあきれてツッコむ。
やれやれと頭を振り、仕事に戻ろうと頭を切り替える。
(女か・・・まぁ、女だよな)
柔らかい体を抱きすくめた感触を思い出す。豊かな黒髪に赤い唇。きめ細やかな肌。
クラウは机に突っ伏した。
「先輩!?本当どうしちゃったんですか!?」
心配そうになってカルネが言う。クラウは顔を上げ、軽く自分に失望しつつ、言った。
「女・・・あながち間違いじゃ・・・」
「えぇ!?」


ばさばさばさ。
音を立てて書類が落ちていく。
フロワードは溜息をつき、本日三度目の失態を恥じた。
「そんなに急がなくて良いぞ。というか、今日体調でも悪いのか?」
シオンがフロワードに対する態度としては珍しく、心配そうに聞いてくる。
王の前でこの失態。フロワードは自分を激しく責めた。
「・・・大変申し訳御座いません。ご多忙の陛下を煩わせて・・・」
「いい。部下の悩みも聞いてやれないで何が王か。で、どうしたんだ?最近調子悪そうじゃないか」
シオンは心底心配そうに聞いてきて、やはり自分の使える王は偉大だと感動した。
「・・・いえ、恐らく、体調管理を怠ったせいでしょう。お気になさらず」
でも言えない。シオンに原因など絶対言えない。
あのパーティーの一件から、クラウが気になって仕方ないなんて。

「あっ・・・」
「おっ・・・」
斜陽の陰が宮殿の中を照らす時間。フロワードとクラウはばったり顔を見合わせた。
あの一件以来、顔を合わせる機会がなかった二人。元々親しくもないので会って話す間柄でもない。
かといって、このまますれ違ってしまうのも、何だか気まずい。
でも、何も話をすることがない。
「「・・・」」
嫌な沈黙が続いた。
フロワードは思わず抱えたままの書類に対する力を込める。クラウから目を逸らし、軽く会釈して通り過ぎようとする。
「な、なぁ・・・」
しかしクラウに話しかけられ、どきりとしてそれも出来ず。クラウの方へ目を向けることすら出来ず、「な、なんでしょうか」と上擦った声を上げた。
「ちょっと・・・飲まねぇか?」


クラウに連れられてきた酒場は、貴族達が飲むような上等な酒を出すような所ではなかった。
それでも一般市民にすればわりと値段の張る酒場だろう。貴族達ほどの絢爛さはないが、それなりに雰囲気の良い酒場だった。
フロワードは酒を嗜む趣味はないが、全く飲めない訳でもないが強いわけでもない。
一方クラウは酒に強そうだ。ほんのちらりと彼を見ると、彼は明後日の方向を見ていて様子がおかしかった。
いや、そもそも二人で飲もうなどと言い出す時点でおかしい。ずっと険悪な関係であったし、フロワード自身馴れ合いを嫌った。
パーティーの一件までは。
「・・・」
フロワードは先日の一件を思い出してグラスの酒を一気に煽った。
俯き、クラウの顔を見ることができなくなってしまった。
(クロム元帥閣下は・・・どういう意図で私を誘われたのでしょうか・・・)
仲の悪い自分と飲んでもクラウが楽しいとは思えない。
楽しくないのに自分を飲みに誘う。
「元帥閣下」
「あ、なななんだよ!?」
「本日は何かお忍びで仕事についてお話があるのでしょうか?」
王宮でも二人の屋敷でも話すことのできない何か重要な話があるのだろうか。
根っからの仕事人間で根暗なフロワードはそう思い、浮ついていた自分を恥じたのだが。
「あ?ちげぇよ。まぁ、同僚と親睦を深めるのが仕事なら、仕事だがよ・・・」
「元帥であるあなたと私は上司と部下であって同僚ではないと思いますが・・・」
あっさり否定されて、では何だろうかとフロワードは首を捻る。浮ついた気分を恥じたのだが、仕事でないなら・・・
(・・・浮ついた、気分?)
自分の心の中にある不純物に、フロワードは一瞬胸を詰まらせる。
何故自分はクラウに飲みに誘われたからといって浮つくのだろうか。
こんな気持ちは知らない。
わからない。
フロワードは完全に混乱してしまった。
目の前にあったボトルの中身を自分のコップに注ぎ、再び一気に飲み干した。
「良い飲みっぷりだな。なんだ、酒豪だったのか?」
「いえ、普段はさほど飲みませんが・・・」
そういうフロワードの顔色は、心なし赤い。
普段あまり飲まないアルコールが回ってきている。
クラウも負けじとグラスを呷り、アルコール濃度の高い酒を飲み干す。見た目通り酒には強いのだろう。二人とも無言で酒を進めるが、クラウは顔色をなかなか変えない。
二人きりで酒を飲んでいるのに会話一つない二人組に、店員はいぶかしむ。しかし下世話な勘ぐりをするような店でもないらしい。好奇心の強い視線を感じることもない。
「・・・良い店だろ?穴場なんだ」
作品名:クラウ×フロワード 作家名:ハクヨウ