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ゆめのおわりex

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1.

「帝人、このクッキーうまいなあ!」
「…勉強しようよ、正臣。」
漫画を読みながら、帝人の実家から送って来られたクッキーを絶賛する正臣を、ジト目で見やってから小さく溜息を吐く帝人。

学園に再び通い始めたものの、決して短くない期間、学校を休んでいた帝人と正臣は、
簡単には学校に授業についていけなくなってしまい、二人でしばらく集中勉強合宿をすることになった。
最初は、杏里も、教え役としての参加を申し出たが、
合宿開催場所である帝人の古びたアパートに杏里を招くのを恥ずかしがった帝人の意向と、
ある程度分かるまでは自分たちだけで勉強して、どうしても分からないところだけ杏里に教えてもらう、
と意地を張った正臣の意見により、二人だけの勉強会となった。
もっとも、決まってから、「男二人で何日も合宿なんて…潤いがない!!」とかふざけて言い出した正臣に、帝人とひたすら呆れた視線を送り、杏里も困ったように笑っていた。

そしていざ合宿がはじまると、案の定、正臣が教科書を忘れて、代わりにお気に入りの漫画を持ってきたり、「こんなものが出てきた!」と、非常に古い、埼玉にいたころのアルバムを持ってきたりと、当初の目的から大いに脱線しながらも日々は過ぎた。

ある日、持ってきたアルバムを眺めていた正臣が、
「おお、帝人!」と呼ぶものだから、帝人が「…なに。」と、いつになったらちゃんと勉強するんだろうと思いながら目を上げると、正臣が人の悪い笑みを浮かべて、一枚の写真をひらひらさせていた。
帝人はその写真に目を凝らし、次の瞬間、顔を真っ赤にさせた。
「ままま正臣!!!何でそんなもの持ってるの!!!」
それは、帝人が本当に小さいころ、おねしょをしてしまったときの写真で、
半べそでおねしょの跡がついた布団と一緒に写真をとられた帝人が写っていた。
慌てて正臣から写真を取り上げようとする帝人の腕を軽く避けて、
「いやあ、うちの親が、帝人の半べそ顔があんまりかわいいからって、帝人のおばさんから写真もらっちゃったんだよなぁ。」
それが、俺のアルバムに一緒くたに仕舞い込まれてたってわけ、と楽しげに告げる正臣に、帝人は唖然とする。
「な、なにそれ!?みんな何考えてるの!?
 とにかくそれ返して!それか捨てて!」
むきになって写真を取り返そうとする帝人をにやにやしながら見遣って、「どうしようかなぁ」などと嘯く正臣に、帝人が必死の特攻をした。
つまり、体当たりした。
「おお!?」
さすがに想定外だった正臣は、もろとも倒れこむ。
「ってて…。」
頭をしたたかに打って、力の緩んだ正臣から写真を奪う帝人。やった、と起き上がろうとしたところで、
正臣に腕を掴まれ、「うわあ!?」と声を上げながら正臣の上に逆戻りする。
「逃がさんぞ、帝人ー。」
帝人の腕を捉えたままにやりと笑う正臣。
そのまま、また、写真を奪い返されそうになって、じたばたもがく帝人。
「は、離せー!」
最終的に、当初の目的を忘れて、畳の上でじゃれあうように、ごろごろ転がる二人。
やがて、体力のない帝人が先に力尽きて、体を投げ出す。
「ああもう、なんで正臣はそんなに力があるんだよ!」
「筋トレが足りんぞ、帝人。」
と馬鹿な話をひとしきりしていると、不意に、正臣が黙り込む。
「…正臣?」
正臣に、いつもと違う空気を感じて、問いかける帝人。
体を投げ出した帝人に覆いかぶさるようにして正臣が覗き込んでいて、その光景に、いつかの記憶がフラッシュバックする。
必死だったあのときの記憶が蘇り、体が強張る。
しばらくして、正臣が口を開いた。
「帝人」
ひどく静かに、名前を呼ばれ、そっと頬に手が触れられる。
それに反射的にびくりと震えてしまってから、懸命に自分を落ち着かせる。
落ち着け、これは正臣だ。大丈夫、だから…。
「まさ、おみ?」
声に震えが出ないように気を付けながら、名前を呼ぶ。
正臣はひどく真剣な瞳で帝人を見つめながら、言葉をつむいだ。
「あのとき、言ったかも知れないが…
 もう一度言う。言わせてくれ。」
声に含まれた真摯な響きに、息を呑む。その腕は少し震えているようだった。
「…好きだ。帝人。」
告げられた言葉に、大きく目を見開く帝人。
「鈍いお前に勘違いされないように言っとくとだな。これは友達のlikeじゃない。
 恋人に向けるような、loveの意味でだ」
未だかつて見たことがないような、ひどく真剣な、思い詰めた瞳をした正臣に、名を呼ぼうとした帝人の声が震える。
「まさ、おみ…」
そんな帝人の反応に、正臣は瞳を不安げに揺らしながら、言い募った。
「嫌、だったら、、気持ち悪かったら、言ってくれ。
 俺は…、俺も、こんな想い、永遠に口にする気はなかった。
 でも、この前のことで、帝人を永遠に失うかもしれないってことに気づいて、
 めちゃくちゃ怖くて、この気持ちを伝えてなかったことを、すげー後悔した。」
意を決したように、その視線はひたりと帝人を見つめた。
「だから、言わせてくれ。帝人。
 俺は、紀田正臣は、お前と一緒に埼玉でつるんでたあのときからずっと、
 竜ヶ峰帝人のことが、好きだ。」
あんまり驚いて、正臣を見つめ返すことしか出来ない帝人に、正臣は言葉を続けた。
「お前が嫌だって言うなら、忘れる。
 忘れるように努力する。」
だから。
「教えてくれ、お前は俺のことを、どう思ってる?」
少しは望みがあると思ってもいいのか
想像もつかなかったことを告げられた驚きで頭が飽和していた帝人は、ただ、目を見開いて正臣を見つめるしか出来ない。
じりじりと時間が流れる。
何か答えなくては、そう思うのに、頭がうまく動かなくて、何も言葉が出ず、途方にくれる。
正臣のことをどう思っている?
誰よりも大切な親友だ。
苦しいとき、哀しいとき、いつも一緒にいてくれて、影ながら、ときには直接的に、助けてくれた。
でも、友達以上の意味で考えたことがあるか?
よくわからなかった。
正臣はただの「友達」じゃなくて「親友」だ。
それは間違いようがない。
でも、恋人?
…よくわからなかった。
園原さんに抱くような、胸をときめかせるような感情は、正臣に抱いたことはない。
だって、正臣は、誰より大切な親友であって、手の届かない「恋人」ではない。
でも、恋人のようにかけがえのない存在だ、といえばそれは確かだった。
だが、恋----?
それは、もしかして、青葉や臨也さんが僕に求めたような行為を、正臣に望むかということを問うているのだろうか。
それは、そんなことは考えたことはなかった。
じゃあ、どんな感情なのだろう。
そう考え、帝人はますます途方にくれた。


作品名:ゆめのおわりex 作家名:てん