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みとなんこ@紺
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One-side game

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コン、と。












「配達でーす」
開いた扉を一度ノックして、兄弟と入れ違いに入ってきたのは見慣れた部下だった。
そして手には見慣れた山。
「これ以上いらん」
「まだおかわりあるらしんで、ぐいぐいいっちゃってください」
至極嬉しそうに書類を追加していく部下の目を無言でじっと見てやれば、「…と、中尉がですね」と顔を逸らす。
東方司令部では、この問題児ならぬ問題上司への対処法として中尉の威を借るのを躊躇う者はいない。
案の定、小さく舌打ちして上官は視線を逸らした。
「頼みますよー。ここしばらく色々重なったお陰で報告書山積みなんですから。期日直前にボツとか勘弁してください」
「だったらもうちょっと読める字で書くかタイプライターを使え、馬鹿者」
「アレやるくらいなら書いた方が絶ッ対早いです」
「中尉に教えてもらえ」
「・・・個人授業ってちょっと嬉しい響きですよね」
「お前の額に穴が開くのとどちらが早いか賭けになりそうだな」
じゃ、オレは穴に1票で、と返せば盛大なため息が返ってきた。本当にあいつは苦手なのだ。
まぁどのみち、この山の状態では2、3日で報告書のチェックが上がってくるはずはない。それこそ賭けても良い。
取りあえず、一発OKが出ることを祈るばかりだ。
あと、この目の前でしんみりしている人がやる気になりますように。



窓際で佇んだ彼の視線は何かを追っていた。
さり気に窓に近寄って僅かに押し開ければ、熱を孕んだ風が室内に流れ込んでくる。
胸ポケットから箱を取り出してちょっとすいません、と一つ断ったが、特に文句は出なかったのでそのまま1本抜き出したタバコに火をつける。
カシン、とジッポの蓋を閉じる乾いた音と、僅かなオイルの匂い。
何の気なしに視線を追うように階下に目をやれば、赤いコートと鈍い光を弾く鎧が中庭を連れ立って歩いていく。
そういえばさっき腹減ったとか言ってたような。ここしばらく、久し振りにイーストシティに長期滞在中なので、この前に開いたばかりのオススメのホットドックの店とか教えてやれば良かったな、とか思いながら見送っていれば。



「・・・・・・あまり聡いのも考えものだな」



話しかけられたかどうか、微妙な調子だった。
何の話か、なんて聞かずともわかる。
ご本人様の自覚の有無は不明だが、この上官はあの兄弟の事は結構ちゃんと相手しているので。
「むしろ慣れてきたんじゃないですか?」
「何に」
「え、大佐に」
どういう意味だ。
「ほら、何かこー、単純な事でも裏に絶対何かありそなカオというか、はいすいません黙ります」
段々上司の目が怖くなってきたので、撤収。引き際と順応性が肝心なのだ、ここでやっていくためには。
「…まぁ、たいしょー育ち盛りですし」
「背以外は?」
「止めて下さい。戻ってきたらどーすんですか」
「私は別にどうもしないが」
「あんたらの喧嘩に首つっこんだら命がいくつあっても足らないんでホンット勘弁して下さい」
「・・・お前が私たちをどういう目で見ているのか、今度じっくりと聞かせてもらおうか」
練兵場とか是非その辺で。
って、それホントに死にますから。







あとはお願いしますー、とか適当に言い置いて執務室から退散する。
何だかんだとぶっ続けに出動しているが、悪名名高き地域である東部は中々落ち着かない。
先日の一件も一段落はしたが、結局関係取引先その他の監査だの調査だのはこれからだし。
・・・書類仕事が多くなってくると、しょっちゅう行方をくらます大佐の気持ちが分るようになってきて危険だ。
それでも一度逸れた気は机に戻る気合を奪い去り、何だか気が付いたら勝手に足は玄関に向かっていた。
・・・このまま午後の巡回に出よう、かな。
いやいやいや、このままだと本当にあの上司の二の舞三の舞。
「あれ?少尉、どっかいくの?」
ぎりぎり踏みとどまっていたら、どうやら買い込みだけ済ませてきたらしい兄弟とかち合った。
「・・・暑くて面倒だなーと思うけど外回りに行くか、それとも大人しく報告書片付けに行くかそれが問題でなー…」
本気でそう思っているのに、しみじみとそう言ってやれば、子供は何だか微妙そうな顔で人の顔を眺めている。
「どした?」
「・・・言いたかないけどさ。ほんとそゆとこ大佐っぽくなってきたよな、少尉」
今回つくづく思ったぜ、なーんて凹まされる事言ってくれているが。
その台詞、そのうちきっと後悔する様になるぞ、大将。
だってしょうがないだろ。影響受けないわけないじゃないか、あんな人。
ニシシ、とかしてやったりな顔をして笑っている場合じゃない。
望むと望まざるとに関わらず、絶対この子供も似てくるはずだ。ほら、さっきだって。
部屋から出ていくのにすれ違った時の顔、そっくりだったから。

そう言ってやれば、子供は何だか絶望的な顔をした。
ざまみろ。





作品名:One-side game 作家名:みとなんこ@紺