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みとなんこ@紺
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One-side game

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「…どういう事か分らなかったんですが、勝手に開ける訳にもいかないし、一旦イーストシティに戻るしかないねって話をしてたら、次に停まったペオリアの駅でちょっと目を離した隙にトランクを…」
「大将が追っ掛けてったって言ってたよな?トランク持ってったのはどんな奴だった?」
「…ペオリアの、街の子達みたいなんです」
「街の?」
「ええ。駅のホームでパンとか売ってた子たちなのか、そちらとは関係ないのかまでは分らないんですが…」
段々アルフォンスの声が小さくなっていく。詳しく聞いていないので分らないが、何となく雰囲気でそのトランクの中身が重要なものだとは分る。2人で危惧したとおり、だ。
やはり自分たちは当たりを引いたのだろう。・・・あまり良くない意味で。何と言っても、まず司令部の空気が違うのだ。



「・・・トランクの盗難は偶発事故と考えても良いんですかね」
「証人がトランクを手放したのも偶発事故かもしれないわね。…それとも、手放さざるを得ない状況だったとすると、我々が思っているよりも早く、事態は動いている事になります」
「ファルマン、一番早い上り列車の時間は」
「15分後に1本イーストシティ駅に折り返し列車がありますが、通常ペオリアには停車しません」
「鉄道局に掛け合って一時停止させろ。ただし一般乗客は下ろすな」
もう一度地図に視線を落とす。ペオリア湖の周りにもいくつか湖畔の街が存在している。ペオリア湖の水運を利用して行き来も盛んだ。船さえあれば、陸路を馬車や車で行くよりも遙かに手間が掛からない。昔からこの辺りはそうして栄えてきた。
その中の街の一つに目を留める。
「・・・ターゲットの工場も近くにあるらしいな」
「湖を挟んだ対岸ですが。・・・ギリギリ東部の管轄ですね」
「・・・こっちからじゃニューオプティンとかのが近いじゃないですか。良いんですか?かっとばして」
基本的に東部地域全体を総括するのは東方司令部ではあるが、それぞれの地方に拠点となる支部はある。大抵の事はやれ合同調査だの譲渡だのややこしい事になるのだが。ましてや向こうの支部の少将サマとうちのボスはそんなに折り合いもよろしくないことだし。
しかしそれも承知の上なんだろう。ニヤリと上がる口元が嫌な感じだ。
「証人が直接保護を求めてきたのは東方司令部だ。それに今回は証人以外の者にも累が及ぶ危険性がある。迅速な対応が必要とみなされる…という将軍の判断と指示の元で我々が動く、と」
「後付けで、っすね」
勝手に先を続けても否定はなし。
実質上のトップの判断で、これで東方司令部的にはやってしまったもの勝ち、のスタンスで行くことが決定された。
「大佐、支部からすぐバーレイに人を回すそうです」
「取りあえず、証人が無事かどうか確認したいところだな」
「もういっそ証人の家の周辺とかで騒ぎでも起こってくれれば早いんですが」
「まずは証人の確保、それと証拠物件の回収だ。――――アルフォンス、来てもらったところすぐですまないが、手を貸してくれるかね」
「あ、はい!」
「ハボックと一緒に汽車でペオリアへ戻ってくれ。あそこは入り組んだ街だから地図を用意させよう。君の任務が一番の肝になるかもしれないので心して向かってくれ」
「は…、はい?」
内容的には軍属でもないただの一般人に向けられたものとは思えない。
ただ、告げられた言葉は厳かに聞こえても、大佐本人は何か楽しんでいることはその表情が物語っている。どう返したものかと戸惑うアルフォンスに向けて、人の悪い大人は僅かに目を細めて笑って見せた。
「一刻も早く君の兄の捕獲を頼むよ。そして勿論トランクの保護もね」




作品名:One-side game 作家名:みとなんこ@紺