二次創作オールジャンルの短い話のまとめ。(永遠に執筆中)
『だれもたすけてくれやしない。』( 捏造幼少元親)]
戦場であがる鬨の声、あたりを濡らし散らす赤い血、悲鳴、嘆き、下々を省みない大将、なにもかも怖かった。
家なんて継ぎたくない、俺が継がなくても代わりだって居るんだし、構わないだろうに。そう、ずっと思っているのだけど父様は許してくれなかった。
おなごらしく生きれば諦めてくれるのではと、女物の着物に袖を通し、眼帯も愛らしい色合いにして、髪飾りもじゃらじゃらと付けた。父様の部下には呆れられ、姫若子と揶揄されているのを知っている。次代だって父様以外は、俺の弟を推薦しているのも知っていた。だから、もう家を継げなんて言われないと思ったのに、父様が許してくれなかった。
初陣に出ろ、と身の丈より遙かに大きい槍を持たされた。俺だって隠れて少しは鍛錬はしていたから、弟と互角とは言わなくてもある程度は戦えるだろう。しかし、それを知らない筈の父様(か父様の部下)は俺に死んでくれと言っているのだろうか。そう思うと、足がかたかた震えた。武者震いか、と父様は豪快に笑う。怖い、なんて言えなかった。
法螺貝が鳴り、砂塵をたてながら人が雪崩込んでくる。俺はまがりなりにも次期党首である、だからか人が沢山寄ってきた。
(ごめんなさい)
そう心で思いながら、相手の首筋目掛けて突き刺した。引き抜けば血が溢れ出てきて、自分の具足に少なからず付着する。あなたを殺さないと俺が死ぬんです、まだ死にたくないんです。まるでお経のように、何度も何度も繰り返し心の中で呟いた。
遠くから雄叫びが聞こえる。びっくりして振り返れば、父様の部下が俺に向かって労いの言葉を叫んでいるのが見えた。
先刻までは俺の事を見下げていた男に、今更、誉めちぎられても嬉しくもなかった。寧ろ憎たらしかった。敵を斬り殺す槍の切っ先を味方に向けたくなった。
「どうして、俺を助けてくれないんだ」
下々の部下を省みないみない大将は怖かった筈なのに、今はヒトカケラも恐怖を感じなかった。むしろ一兵卒の方が怖かった、保身の為なら何度も鞍替えをし、自分を庇護してもらい助けてしまう事しか考えない穀潰しとしか思えなかったのだ。
作品名:二次創作オールジャンルの短い話のまとめ。(永遠に執筆中) 作家名:榛☻荊