永遠の片思い
「臨也さんに、一つ、良いことを教えてあげましょう」
そして少年はここにきて初めて笑顔をみせた。
…『愛』というものは無限に生まれてくるものではありません。
無償の愛なんてものが存在しないように、与え続けるだけの愛が成立しないように、誰かに愛を与えられ、初めて人は誰かに愛を与える事ができるのです。
見返りを求めない愛はいつか尽き、心を枯渇させ、壊してしまいます。
そう、本物の『愛』を与え続けるには本物の『愛』が必要なのです。
「さて、ここで質問です」
「貴方は、『人間』を愛しています」
「そしてその『人間』である『僕』も当然愛しているのでしょう」
「けれども、『僕』は貴方が大嫌いです」
「それでも―――――――――」
それでも貴方は本物の『愛』を『僕』に与え続けられるのですか
あまりにも唐突に問われたそれにいくらかの間をあけて肯定の意を返す。
「…出来るよ」
「僕を愛しても何も返ってはこないのに?」
「俺の『愛』に見返りはいらない 俺の愛に対して人間はその行動で、感情で俺を楽しませてくれる それだけで俺は満足なんだから」
「本当に?」
「本当にそれで満足ですか?」
臨也さんは満足したつもりになっているだけではないのですか?
減っていくだけの愛をそうやって誤魔化しているだけではないのですか?
楽しんでも楽しんでも足りないのでしょう?もっともっとと欲張ってしまうのでしょう?
渇いて、欲しくて、痛くて、与えたくて
そんなに苦しい思いをしながら、その生き方を変えることなどできないのでしょう?
「――――――――…だから貴方は可哀想なんですよ臨也さん」
渇いた喉を潤す為に残っていた紅茶を飲みほした少年は―――底に砂糖でも溜まっていたのだろうか、眉を顰めながら静かに笑う。
その瞳に映る俺は見たこともないような顔をしていた。
その顔に込められた感情を自分でも読み取ることができない程に。
「僕は貴方が大嫌いですけど、今みたいな貴方は好きです 寧ろ愛おしい
そうですね…もし、僕のこの勝手な憶測が当たっていて、いつか貴方の愛が尽きた時、貴方が壊れるその時」
泣いて縋って愛してるって言えば本物の『愛』を貴方にあげますよ
その言葉を嬉しいなんて思ってしまっている俺は
案外もう壊れているのかもしれない。