連続実験:症例H
イジメ? 違うわ。古手川さんも、変わってしまっていたのよ。まるで存在感のない、地味で目立たない女の子にね。
(どうしてこんなことになったのかしら……)
何をやってもうまくいかず、友人も失ってしまった古手川さんは、落ち込みながら一人で家路を歩いていたわ。
そして、途中にある公園を通り掛かった時、自分の彼氏が水島さんとキスしている現場を目撃してしまったの。
「何をしているの!?」
古手川さんは、思わずふたりに駆け寄って怒鳴ったわ。
弁解のひとつやふたつしてくれるものと思っていたのに、恋人である筈の男は蔑むような目で古手川さんを見たの。
「お前みたいな地味な女と付き合っていたなんて、どうかしていたよ」
古手川さんは、ショックを受けたわ。悔しくて、悲しくて、どうにかなってしまいそうだった。そして、その感情の矛先を、水島さんに向けようとしたの。
でも、水島さんと目が合った瞬間、動けなくなってしまった。
水島さんは、憐れむような目で古手川さんをみつめていたのよ。
そこで古手川さんはやっと、自分の心の歪みに気付いたわ。水島さんを庇うような行動をとっていながら、本当は誰よりも水島さんを見下していた自分にね……。
それにしても古手川さんと水島さんは、どうして入れ替わるように変貌してしまったのかしら。
旧校舎の魔法? それとも、水島さんの呪い……?
どちらにしても、人のことに干渉したってろくなことにはならないということね。ふふふ。
さあ、私の話はこれで終わり。次は誰が話すのかしら?