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バスケットボール部へようこそ

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数時間後には、誠凜高校バスケットボール部の命運が決まる。男子バスケ部員の表情には緊張の色が濃かった。
 この日は正門からのアプローチに机が設置され、新入生の部活勧誘と入部受付が行われることになっていた。どこの部も自分たちが立ち上げた部活への新しい部員を獲得したい、と多かれ少なかれ熱気を帯びている。
 数に比例した喧噪の中、ひとり不安や緊張よりもやる気と期待をみなぎらせた相田リコが「いい?」と部員たちを見回す。
 「うちの部が欲しい新入部員は量より質だけど、量がいれば質のいい新入生に遭遇できる可能性が増えるわ。だから、有望そうな新入生をいっぱい連れてきてよね!」
 にっこりと笑顔を見せるリコに、伊月は一応、といった調子でツッコミを入れる。
 「カントクカントク、ソレ最終的にハードル上がってるから」
 「え、そう? まあいいじゃない」
 案の定、さらりと流される。
 「そんな、自分がやらないからってムチャ振りをー」
 入部受付のための机を担当することが決まっているリコに、小金井が抵抗を試みた。
 「オレらカントクみたく特殊な目ヂカラ持ってないし、カントクも勧誘に参加すればよくね?」
 「だアホ、カントクが机番してれば最終的に全員チェックできんだろ」
 日向が小金井をたしなめると、リコは「そーゆーコト」と力強くうなずいた。
 「だからとにかく優秀な人材をいっぱい机まで引っ張ってきてちょうだい! そうねえ、ノルマはひとりあたり入部希望者5人!」
 「……だからハードル高いって」
 伊月が小さくつぶやく。
 「まあそう言ってやるなよ。しばらくはアイツの穴も埋めなきゃなんねーんだから」
 日向が不在の同級生のことを口にすると、全員の表情が引き締まる。彼がいない間に負けたりしない、とそれぞれが心に決めていた。
 「そもそも、みんなも後輩欲しいでしょ?」
 リコがいたずらっぽい口調で言う。
 「後輩かあ、そりゃ欲しいよな」
 土田が願望をにじませると、水戸部が黙って同意を示す。
 「ホラホラ、『センパーイ!』なんて呼ばれてみたいでしょ?」
 さらに男子部員のやる気をあおるべく、リコは新入生を擬して嬌声を上げてみせる。
 「……って、アレ?」
 が、反応は実に薄かった。
 「カントクがやってもねえ……」
 「いまいち心躍るイメージにつながらないっつーか」
 「そもそもうちの部、男バスだし」
 「ぐっ……」
 涙目で言葉に詰まるリコを見かねたか、日向が「バカヤロー、もっとありがたがれよ!」と叫ぶ。
 「日向君……」
 「優秀な部員が入る、オレらがもっと活躍する、そしたら普通にかわいい後輩女子にそう言ってもらえるってことだろ!」
 「日向君……」
 リコのセリフは同じだったが、テンションがまるで違った。
 「結局、主将がいちばんひどいな」
 「そりゃフォローという名のトドメだよー」
 伊月と小金井が口々に述べる。
 「フッ……フフフ……」
 うつむき、暗い含み笑いをもらし始めたリコに、土田は「カ、カントク?」と恐る恐る問いかける。
 「いーから、四の五の言わんと新入生を引っ張ってこんかーい!」
 誠凜高校バスケットボール部員は血相を変え、それぞれの持ち場へと逃げ出した。



 土田の携帯がメール着信を告げた。
 「はいはい」
 目の前にいない相手に応えつつ、土田は携帯を開ける。
 『今日は手伝えなくてゴメン。がんばれ』
 今、ここにいない仲間からのメッセージだった。離れた場所にいる部員たちに視線を送ると、それぞれが携帯を確認している。
 「後輩欲しいし、あとでいい報告ができるようにがんばるよー」
 画面に向かってつぶやき、土田は携帯を閉じた。土田の位置は正門からいちばん遠い、新入生受付の机が途切れるあたりである。そのリバウンド能力を活かして、という名目で他の部員の勧誘をすり抜けた新入生を獲得する役だ。新入生はじきに姿を見せるだろう。
 「ここまでたどり着くのはまだ時間がかかるだろうけどねえ」
 殺気立ってすらいる正門付近の上級生につかまって、新入生はなかなか進めないに違いない。土田が短気とはほど遠い性格なのは、自他ともに認めるところだ。待つことはさほど苦にならない。土田はのんびり構えていた。
 「来たぞ!」
 誰かの声がした。現れた制服のあざやかな黒は、一年という時間の経過を気づかせる。
 「初々しいなあ、オレもあんなだったん……」
 土田が懐かしさに身をゆだねようとした瞬間。
 「だああぁぁぁぁ!?」
 周囲が一斉に正門へ殺到し、人でできた津波は土田を連れ去った。



 半分以下になったチラシを手に、伊月が人波を泳いで来た。
 「主将、どう?」
 「二人。チラシは受け取ってもらえてっけど、最初から入部決めてるヤツはなかなかな」
 通りかかる新入生にチラシを配りつつ、日向は悟ったような口調で答える。
 「同じく。こっちも、入部届けに名前書かせたのはまだ二人」
 『カントクにどやされるな……』
 二人は同時に肩をすくめ、ため息をつく。
 「とりあえず有望そうなヤツをあの机まで行かせりゃ、カントクが説得してくれるような気もしねえ?」
 日向が顔を上げると、「なるほどな」と伊月もうなずく。
 「ということは、とにかく有望っぽいのを見つけて……はっ!」
 「いたのか!? どこだ!?」
 「『バスケット部の助っ人やってみない?』」
 やり遂げた表情を向ける伊月に、
 「黙れ伊月」
 日向は間髪入れず、だが一年には聞こえないよう小声で応じる。
 「そんな言い方でルーキーのやるー気ーを削ぐなよ」
 「悪かった、言い直すわ。黙らねーならどっか行くかどっか逝け」
 「ひどっ」
 小さくぼやきつつ、伊月は前者を選択した。