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バスケットボール部へようこそ

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 「だからオレは二年生だっつーの!」
 小金井は何度目かの抗議の声を上げた。相手の同級生はごめんごめん、と苦笑してチラシを引っ込める。
 「若く見られたほうがいい、なんて姉ちゃんの気がしれねーよ」
 勧誘会が始まってからというもの、同級生にも後輩にも一年生に間違われっぱなしの小金井は、情けない声で肩を落とした。
 「ま、一年にとっちゃ親しみやすいのかもしんないけどね!」
 小金井の持っているチラシは残り一枚。カン違いした一年に、自分はバスケ部の二年生だ、とチラシを差し出すと、埋め合わせのつもりか必ず受け取ってもらえるので、小金井の手持ち分はみるみる減っていった。
 「誰か余らせてるかなー……おっ」
 あたりを見回し、水戸部の後頭部を見つける。水戸部は身長は目立つが、性格は非常に控えめである。きっとチラシも持て余しているに違いない、と小金井は最後の一枚を握りしめつつ、人波をかき分け始める。
 近づくにつれ、水戸部が困惑している雰囲気が伝わってくる。誰かに話しかけられ、しきりに首を振っているようだ。相手は人の壁に埋もれ、姿が見えない。
 「水戸部、通訳したげる!」
 寡黙な友人のスポークスマンを務めるべく、彼のもとへたどり着く。振り向いた友人は、心底安堵したようだった。
 「ごめんね、コイツ無口でさあ……」
 言いかけ、小金井は絶句する。水戸部の向こうにいたのは真新しい制服を身に着けた、外国人の少女だった。
 「○§▲#☆$◇※£!?」
 せっぱ詰まっているのか早口の、英語らしき言語。通訳は確かに必要だったが、事態は小金井の予想を超えていた。青ざめる小金井と外国人の後輩を、水戸部はおろおろと見比べる。
 「つ、ツッチー! ツッチーどこにいたっけ!?」
 英語の得意な友人の名を呼ぶ。
 「バスケットボール部の土田聡史ー! いたら返事しろー!」
 大声を上げると、「コーガー……」とどこかから弱々しい声が聞こえてきた。見れば、土田は正門近くで人波にもまれ、おぼれかけている。
 「水戸部、オレちょっとツッチー助けて連れてくる! 必ず戻るから待ってろ!」
 毅然と告げた小金井に、水戸部は不安の色をにじませつつもうなずく。
 「んじゃこのチラシ持ってて……ってアレ? まいっか、どっかで落としたんだろ」
 いつの間にか手ぶらになっていた自分に一瞬首をかしげたが、すぐに「行ってくる!」と人混みへと突入する。ラッセル車でも使いたくなるような混雑だったが、小金井は内心上機嫌だった。
 「さっきのオレ、ちょっとカッコ良くね? 『必ず戻るから』なんてなかなか言えるセリフじゃねーし……うわっ!」
 次の瞬間、それは言う機会がないだけでなく遂行も難しいことを小金井は思い知らされることになる。
 「おい、バスケ部はどこだ」
 愛想のかけらもない声とともに、小金井の身体がつり上げられてゆく。襟をつかまれているので、犯人の顔は見えないが、殺気のような迫力をひしひしと感じる。
 「あ、あっちです……あそこの、ショートカットの女子がいる机です」
 本能的に危険を察知した小金井は、逆らわず人間ダウジングマシンと化した。人の群れをものともせず、その人物は悠々と進む。自動的に小金井も運ばれる。
 目的の机の前で立ち止まり、小金井は恐る恐るリコに呼びかけた。
 「来ました、新入生……」



 「マジであんとき怖かったんだぞー!」
 真新しいチラシの束を振り回しながら、小金井は猫のような唇を尖らせた。一年前、小金井をダウジングした犯人は、「スイマセン」といちおうの謝意を口にする。
 昨年勧誘される側だった一年生も進級して勧誘する側となり、今年の新入生勧誘会に臨もうとしている。
 「けどおぼえてねー、です」
 「ひっでー! オマエはそーゆーヤツだよ!」
 ますます小金井はむくれてみせ、水戸部がなだめたが、彼が本気で怒っていないことは、誰の目にも明らかだった。
 「黒子は勧誘とかされなかったんだろ?」
 降旗が尋ねると黒子はうなずき、「でもチラシはもらいました」と付け加える。
 「へえ、誰か黒子に渡してたのかあ」
 土田が意外そうな声を上げると、伊月も同意する。
 「見逃しそうなもんだけどな。誰にもらったかおぼえてるか?」
 「はい、あれはたぶん……」
 「ねえ、そんなことよりさあ!」
 リコが割って入った。
 「去年の話聞いてると、小金井君ってけっこう勧誘に使えそうじゃない?」
 「使える?」
 今年はじめて勧誘に参加する木吉の言葉に、リコは「そっ」とうなずく。
 「まーオレが優秀ってコトでしょー!」
 冗談めかして胸を張る小金井に、「たぶんそーゆーイミじゃねーぞ」と日向がつぶやく。
 「ある意味優秀だと思うわ。だからホラ、小金井君をそのへんに置いておくと火神君みたいのが釣れるかもしれないんでしょ?」
 「人をエサみたいに言うなー!」
 「人を魚みたいに言うんじゃねえ、ですよ!」
 小金井と火神が同時に抗議した。
 「その言い方はおかしいんじゃないか?」
 木吉が首をかしげ、小金井は「木吉……!」と感動のまなざしを向ける。
 「どっちかっつーと、ネズミ捕り器のチーズとネズミ、みたいなイメージ?」
 「ああ、上から針金がバチーンと落ちてくるやつね」
 「それを言うなら、別にネズミ捕りじゃなくてもいーだろ。野性動物向けの罠みたく、コガを地面に置いといて引っ張ると上から網とか檻とか落ちてくるみてーなカンジでさ」
 三年の間で物騒な想像が交わされ、青ざめた水戸部を見た伊月が「あっ」と声を上げる。
 「『罠にわななく』!」
 一瞬の沈黙ののち、
 「……だから、なんでどこまでもエサ扱いなんだよ……」
 小金井が肩を落とす。
 「火神君も、人間扱いされてませんね」
 「うるせー!」
 男子部員のやり取りに笑っていたリコは、時計を見て表情を引き締める。
 「そろそろ一年生が来る時間よ」
 リコは昨年と同じく机番担当である。机の後ろに回り、挑むような笑みを浮かべる。
 「それじゃみんな、勧誘よろしく!」
 「おう!」
 監督である彼女の言葉に応え、誠凛高校バスケットボール部員はそれぞれの持ち場へと駆け出した。バスケ部の今年と、未来のために。