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daybreak

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外に出ると既に空はまだ暗く、いつもなら一人や二人見かける人影も見受けられないせいか静寂に包まれていた。財前は早朝特有の綺麗な空気を肺一杯に吸い込むようにして深呼吸をする。
昨夜は数時間後に迫る"この時"のせいか緊張であまり眠れなかった。
ただ先程まで眠気によってくっ付いてしまいそうだった瞼は自分でも驚くくらいにスッキリひらききっている。

庭の奥に引っ込めていた自転車をズルズルと引き出した。
あの人とゆっくり話しながら歩くあの時間が大好きで、最近はほぼ徒歩通学になっていたせいか使っていないその自転車からギィギィと不安な音が聞こえている。
大丈夫だろうか?と一応軽くペダルを踏み込んでみた。チェーンがカシャカシャと耳障りな音を奏でるが、どうやら大丈夫みたいだ。

時計を見ると午前4時半を指している。予定時刻の午前5時半まではかなりあるが、自然現象に関しては確実とは言えない。さっさと出てしまった方がいいだろう。
財前はそう思って頷き、ペダルに足をかけ自転車に乗り込んだ。

あの人の家までは自転車で約10分。

===

9月10日。俺の誕生日を明日に控えたそんな日―…は別段特に何ら変わらない平凡な一日だった。
朝普通に起きて、途中で恋人でもある光と合流して学校に行って、朝練をして、授業を受けて、ご飯を食べて、また放課後部活をする。
そしてその後は光と帰って、家でお笑いテレビを見て、ご飯食べて、風呂入って、寝るはずだった。

しかし、予想もしない爆弾はふいに部活終了後の光との帰り道で落とされたのである。

「ユウジさん、明日5時に家に行きます」

じゃあまた明日。そう言って光は足早に俺の家の門から離れていってしまった。
はぁ?という声が出たところでもう遅い。元々二人でゆっくり登下校していたのも、歩くのが遅い俺の速度に光が合わせてくれていただけで、彼は歩く速度は相当速かったはずだ。
一度、街で光を見つけたとき声を掛けようとして相当苦労した覚えがある。

しかし、光はいまなんて言ったのだ?5時?
夕方の5時じゃあ部活途中だろうし―…夜型のアイツが朝の5時に予定があるはずなんかない。じゃあ5時とはどういう意味だろうか。
ごじ…?ゴジ?

その疑問は翌日、光の指定した"朝の5時"に解決する事になる。

「おはようございます、ユウジさん」

何か無意識ながらも光の言葉が気になっていたのか結局俺の目は朝4時半にパカッと開いてしまった。
なにをやっているんだろう自分は。学校もあるのに…
と悔やみかけたその時、何故か俺の部屋の窓に何かが当たる音がする。

不審者か?鳥か?猫か?

恐る恐るカーテンを開けたその下には光が自転車に乗って頭をペコリと下げていた。
律儀だなあ…ってそうじゃないだろう!自分!ふいに叫びそうになったところでギリギリ口を押さえる。
そうだ、まだ早朝も早朝だ。完璧ご近所迷惑もいいところだろう。

俺は机の上に置きっぱなしになっていたケータイ電話を取り出して、履歴の中から光の名前を探し出し通話ボタンを押した。光もそんな俺の様子が見えていたのか、コール音は1回も鳴り響く事なく「なんスか」という聞き覚えの良くある低い声が聞こえてくる。

「…お、おはよう過ぎるやろ。お前、何時やと…」
「ええからちょっと出てきてください」

光はそう呟くと俺に向かって手をクイクイと呼び寄せるジェスチャーをした。
何で行かないかんの。そもそも俺、今日誕生日なんだから、もっと言う事があるんじゃないか。友人同士ならばまだしも一応、恋人同士なんだから「おめでとう」の一言ぐらいあっても言いと思う。

ブツブツ呟いてる俺を訝しく思ったのか、光は「待っとる」とだけいって電話を切ってしまった。…ずるい。そんなこと言われたら行かざるおえないじゃあないか。
俺が誕生日だというのに何で俺が気を使わなければならないのだろう。

いまだブツブツと胸から湧き上がる文句を呟きながら、俺は手早く外に出る準備をする。
パジャマ代わりの脱いだ黒ジャージをベッドに投げ捨て、代わりにその辺にあったTシャツとグレーのパーカーを羽織る。下は…ジャージのままでいいかと膝丈のハーフジャージで俺は部屋を飛び出し、静かに玄関へと向かった。
確か両親は仕事で夜中に帰宅したばかりのはずだ。こんなくだらなそうな事で起こすのも何か悪い。

玄関を静かに開閉し、家の門までたどり着く。
光は不機嫌そうな俺を感じ取ったのかちょっと眉を下げながら、俺の瞼辺りに小さく触れるだけのキスをした。
…こんなことじゃ機嫌直らんからな!

「…何の用なん」
「うしろ、乗って」
「は?…え?」
「ええから早う」

光はいまだ戸惑う俺の手を取って自転車の後ろへと誘導する。
人が乗るようにはなっていないはずだった光の自転車の後ろには何時の間にか藍色のタオルが巻いてあった。
光はどことなく焦ってる様子で時計をチラチラと見やっている。
…意味はまだ全然分からないのだけれども、さっきの光の様子から見るに俺に悪いことをするつもりはないのだろう。
俺は光の自転車に跨って、光の腰に腕を巻きつける。
光は「ほな行くんで、しっかり掴まっててください」と小さく呟いて、ペダルを大きく漕ぎ出した。

ああ、今日はちょっとだけ風が冷たいかもしれない。

薄暗い大阪の住宅街にギコギコというちょっとだけ不細工な音が響き渡って思わず噴出してしまうと、光は不思議そうに「なんですか?」と首を傾げていた。
何でもない、と光の背中に零して少しだけ腰に回した手を強めると、光は自分の腹辺りにある俺の手をギュッと片手で握り返して、「ん」と小さく言葉を返した。
光の耳は薄暗くて良く分からなかったけれど、少しだけ赤くなっているような気がする。
よく分からないのに、どこに行くかも分からないのに、何で俺いまこんなに幸せなんだろう。
光には言ってあげないけれど、俺は心の中でそう呟くと何か泣きたくなって来た。幸せすぎて涙が出る。
溢れてきた涙を光にバレないように彼の背中に染込ませたのだけれども、光は何となく感じ取ったのか握ったままの俺の手を小さくそっと撫でた。

光の手はちょっとだけ冷たくて、また涙が出て来そうになる。
自転車の音に紛れて、「好き」と呟くと自転車がまたキィキィ音を立てた。
漕ぎ主に俺もって言われているかのようで、またちょっとだけ笑ってしまう。
…ああ、本当に好きだなあ。

俺の家を出て約20分。
いつのまにかどちらも話さなくなって自転車の軋む音だけが響く中、街並は住宅街から少しだけ緑が多い地域に変わっていた。
広い公園があるこの一帯は犬の散歩やジョギングなどでも使われるため人通りも疎らだが多少ある。
すれ違う人たちがふいにこちらを覗くのが恥ずかしくなって、俺は光の背中に額を当てながら俯き恐る恐る口を開いた。

「なあ光、どこ行くん?」
「教えたりません」
「…ケチ」
「俺は先輩に愛をケチるつもりなんかあらへんすわ」

光はこうやって時折普通の会話に爆弾を紛れ込ませる。
俺はその爆弾の処理方法なんて良く分からないから、アタフタして顔を真っ赤にさせるのがいつものオチだった。光が好き過ぎてどうしていいかわからなくなる。
作品名:daybreak 作家名:みやこ