SWEET TRICK.
落とし穴を作るだなんて公言してそこに落ちる奴なんていないだろう!というツッコミが入るかと思っていたのだが、既に余裕がないのかユウジは目元に涙を溜め、財前の服の裾をギュッと握りながら首を横にフルフルと振った。その普段の生意気さから想像できない艶かしくも可愛い姿に財前は思わず何か噴出しそうになりながらもギリギリのところで踏みとどまる。雰囲気は、大事だ。
普段は恥ずかしいと嫌がるくせに、一旦スイッチが入るとユウジの態度はこんな風に一変する。初めは驚いたものの、今となってはそれも全て含めて愛しいのだから自分も相当盲目なものだ。
―…そんな事を考えていたため少し呆けていた財前に、ユウジが不安そうな視線を送る。
「光?」
「ああ、すんません」
自分を見上げるユウジの瞼に触れるだけのキスを落とした後、財前は彼の下半身に忍ばせた手を優しく動かせながら、ユウジの耳元に唇を運ぶ。
「大丈夫です。優しくイタズラしてあげますわ」
「ひゃ、ひかっ!あ!あ!」
「ただ、ウサギの性欲は半端ないんで、そこんとこ覚えたってください」
その財前の言葉にユウジは一瞬目を大きくさせる。しかしその後すぐ 間を置かずに、「ええよ。もっとイタズラしたって」と財前の付け耳に手を伸ばし、優しく撫でながらそう微笑んだ。
そんな予想していなかった言葉と表情に、財前の喉からゴクリという音がする。
(どっちがイタズラされとんのか分からなくなってきたわ…)
クラクラと飛びそうになる意識を抑えながら、財前は近くにあった休憩用のソファーにユウジを寝かせる。バサリと広がったスカートと、立てた膝の合間から覗く熱。ああ、なんちゅう光景なんだと心の中で呟きながらも、薄らいでいた理性の膜がはちきれるのを感じた。
10月31日が終わるまであと、数時間。
作品名:SWEET TRICK. 作家名:みやこ