Loreley.
きっぱりと言う。この死神の言うことは嘘か本当かわからないものばかりだったけれど、これはきっと後者なんだろうなと思った。ひゅうひゅうと隙間風のような呼吸が口から洩れる。心臓の痛みがどんどんひどくなり、思わず服の上から左胸を握りしめる。その力だけはまだ残っていたらしく、予想していたよりも強く掴めた。それでも痛みは弱まることなく、呼吸がさらにしづらくなっていく。やがて視界も掠れていき、見えなくなるならば最後にと、痛みに俯かせていた顔をあげて死神を見た。
「俺は死神だから、お前とは違う」
満月を背負った死神はサングラスの奥に瞳を隠したままだった。可哀想に、死にかけているくせに俺はそう思った。表情や感情がないのなら、海鳥にエサは与えないし、サングラスの奥に瞳を隠したりしない。それらを持っているから、君はまた苦しむのだろう。俺が何人目の海賊なのかはしらないけれど。優しい哀れなこの死神は、己の生きる理由を納得できないまま、命を奪って生きている。あぁ、なんて可哀想で、愛しい存在なのか。
俺はずっと奪って生きてきたから、もう何もいらない。
こんな魂で良ければ、君にあげるよ。
だから、だから。
泣かないで、俺のローレライ。