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休日の午後

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帝人ver.

地球は温暖化、しているらしい。
結局どこで気温が何度上がろうと、僕ら一般市民の生活には大した変化はなく、蝉の大合唱を聞きながら『あぁ温暖化だからより鳴いてるんじゃない?』ぐらいの気持ちしかない。
ちょっと気軽に家の近くのコンビニに行くまでの間に、ぼったぼたに流れる汗が今すぐになんとかなるって言うなら、明日からエコを叫んでもいいとは思うけど(Tシャツが張り付いて気持ち悪い)
逆にここまで汗に濡れてからコンビニに入ると、急激な冷房で風邪をひきそうだなぁなんてとりとめなく考えながら歩いていると、前を歩いていた人たちがまるでモーゼのように左右に散らばっていく(前から警官でも歩いてきてるのかな?)
額に流れる汗が目に入る前に、腕で拭っていると

「竜ヶ峰」

腕を降ろして前を向けば、春夏秋冬バーテン服のくわえ煙草(あ、なるほどそりゃ避けるか)
よぉ、と片手を上げる静雄さんに、僕も軽くお辞儀をする。

「こんにちは静雄さん」
「おう・・・一人か?」
「大変嬉しいことに一人です」

僕の周囲に視線をさまよわせる静雄さんが探しているのは、当然ながら臨也さんだ。
何が楽しいのか知らないけど、この池袋に引っ越してきてからというものの、3日と空けずに臨也さんは必ず僕のところに顔を見せにくる(暇なんだろうか)(情報屋のくせに)
仲の悪い二人は、仲が悪いからこそ『見つけたら殺す』を合言葉に、お互いが出没しそうなところでは周りをチェックしてるみたいだ。
臨也さんは静雄さんを見かけても何もせずその場を離れることも多いけど(正面からぶつかって勝てるはずないし)静雄さんは見つけ次第何か投げなきゃ気が済まないようで。

「もしノミ蟲が沸いたら呼べよ。殺すから」
「はい。その時は是非よろしくお願いします」

ぺこりとお辞儀をもう一つ。
よし、と笑って煙草を捨てると、わしわしと僕の頭を静雄さんの大きな手が撫でる。
その拍子に髪を伝って、汗が首筋に流れた(あ、手、気持ち悪くないかな)
道端にこうして突っ立っていると、染めてない黒髪の僕の頭では直射日光の吸収率が高すぎる。
さらに流れた汗が目に入りそうになるのを拭おうと手を動かせば、それよりも速く静雄さんの指先が僕の目じりを擦った。

「暑そうだな」
「そりゃ夏ですし・・・というかなんで静雄さんはそんなに涼しげなんですか。長袖なのに」
「ん?あー・・なんでだろうな?冬もあんまり寒くねぇぞ」
「いい体質ですねー・・・」

しかもかっこよくて背も高くて強くて実は優しいとか(完璧か)
世の中の不条理をちょっと恨めしく思う。
せめて静雄さんとはまでは言わないけど、臨也さんぐらいの身長は欲しかった(いや、まだ伸びる)(まだ成長期)
目の前の金髪のてっぺんを見ていたら、軽く首が痛い。
とくに急ぐわけでもないけど、そろそろ涼しいところに行きたくなってきたので

「えっと、じゃぁこれで。失礼します」
「どこか用事か?」
「え?」

心底不思議そうに聞かれると、たかがコンビニです、とはちょっと言いづらい。

「あぁ悪い。もし急ぎじゃねぇなら飯でもどうだ?もう食ったか?」
「いえ、まだですけど・・僕とですか?」

こっくりとなんだか可愛らしい仕草でうなずかれてしまった。
先程のマイ静雄さん評価を訂正しよう。
かっこよくて背も高くて強くて実は優しくてちょっと可愛い、にしておく(無駄のない完璧か)
でも実際のところ特に目的もなくコンビニへ行く予定だったので(あえて言うなら涼みに)ご飯に行くのに抵抗はない。
ただ持ち合わせがそれほどないことぐらいで。

「えっと、マックぐらいなら大丈夫です」
「金は気にすんな。昼飯代ぐらい奢ってやるよ」
「いや、それはさすがに・・・」

いくら誘われたからと言って、簡単にゴチになりますなんて言いたくない。
静雄さんのは親切心だとはわかってるんだけど、事あるごとに恩をきせようとする臨也さんの弊害で(完全なる被害だ)
ごにょごにょと言葉を濁していると(拒否したせいでキレられたらさすがに泣く)何の前触れもなく、静雄さんの右手が僕の首に添えられた。

「え゛っ!?」

(絞められる!?)(うそ!!?)
ガチリと音を立てて体が硬直する。
見上げた顔は青筋が浮かぶこともなく、普段通りの無表情で(ただものすっごい目が合ってる)
逆に目を反らしたら僕は死ぬんだろうか、と思うほどに真正面から視線を受け止める。
じぃっと僕を見下ろしていた静雄さんは、ゆっくりと右の手のひらを僕に首におしあてて、きゅっと浮かんでいる汗を拭った。
親指が顎のラインをなぞる。
前から後ろへ手のひらが触れるたびに、首の血管(動脈?だっけ?)に当たって呼吸が止まりそうになる。
強く押されてるわけでもないんだけど、激しく体が緊張してるせいで軽い圧迫でも息がつまりそうだ。

「・・・・ぁ、あの・・静雄さん・・?」
「・・・本気で暑そうだな」
「そ、そうですね・・・」

だから早く涼しいところでご飯食べましょうよ、と全力で推奨したいんだけど、声をだせる状況でも雰囲気でもない(愛想笑いだけは作っておくけど)
視線だけで串刺しになるんじゃないかと心配し始めた僕の考えなんて知らずに(当たり前)静雄さんはふっと口の端を緩めて、ひどく楽しそうに笑った。

「うまそうだな」
「はい・・?」

なにが?と聞く間もなく、静雄さんの顔が近づく。
静雄さんの右手はいつの間にか首じゃなくて、僕のTシャツの襟繰りを軽くひっぱって。
意外と柔らかい金髪が僕の耳をくすぐった。

「いっ!?」

鎖骨の上、さっき撫でられていた血管の下あたり、に濡れた感触。
汗が流れるのとは違うぬめりと、その次に皮膚が吸われる感覚。
(どう考えても)静雄さんの舌が、唇が、首筋から離れても、顔が僕が見上げていた地点に戻っても、結局指先すら爪の先すら動かせずに、僕はただ突っ立っていた(え、いまの・・・何?)

「よし、じゃあ行くか」
「は・・・あ、はい・・・」

ものの数秒で僕を混乱のドツボに突き落としておきながら、あっさりと背中を向けたその人に。

(死にそうです、静雄さん)

顔が真っ赤になってるのは、夏の暑さのせいだと誤魔化しておきたい。




『静雄に公共の場で襲われたっていうのは本当か?』
「セルティさん!?なんですかその情報!?」
『臨也が泣きながら家に来て散々愚痴って酔っぱらって帰って行った』
「何やってんのあの人は!どこまでも迷惑な人ですね」
『静雄に公共の場で』
「それはっ、その・・なんていうか、あれですよ、暑さのせいです」
『・・・・・・』
「三点リーダーを打たないでください・・・なんかいたたまれないです」
『でも顔真っ赤だぞ帝人』
「あぅ・・・し、静雄さんって無駄なく完璧な人ですよね」
『(完璧なやつはキレて標識もぎ取ったりしないと思うぞ帝人・・・なんとかは盲目ってやつか?)』

作品名:休日の午後 作家名:ジグ