潰れた苺
考え込んでる坊やを抱きしめながら頭を撫でてると、ふと坊やが頭を上げた。
その表情は少し悲しそうな顔をしていたがいつも通りのネロだった。
内心そのことにほっとしつつ、俺は坊やが口を開くのを待った。
何度か躊躇しながらもやっと決意したのか坊やが口を開いた。
「あのな、今日特売でスーパーに行ったんだ」
「ああ」
「そこで苺の安売りもしててさ」
「もちろん買ったよな?」
「うん、でも…」
「でも?」
「せっかく買ったのに…俺、落として潰しちゃったんだ…」
「……は?」
「買い直そうと思ったんだけど、売り切れてて…」
「もしかしてそれで元気が無かったのか?」
「うん」
俺は思わず脱力して坊やにもたれ掛かった。
「はぁ~、なんだそんなことかよ」
「そんなことってなんだよ!いつもうるさいのはおっさんだろ!」
「まあそうなんだが」
「人ががっかりさせちゃ悪いかなって言おうか迷ってたのに、なんだよその態度!」
「俺を気遣ってくれたのか?」
「当然だろ!」
「坊や、我慢出来ん」
「は?何言って…ちょ、やめっ…」
「お仕置きだ、お仕置き」
「なんのだよ!」
「苺を落としたのと俺に無駄に心配させた罰だ」
「なっ、そんなの知らな…」
「いいから黙って抱かれてな」
そう言って俺は坊やの口をふさぐために口づけた。
これだけ俺に心配させたんだ、たっぷりサービスしてもらわなきゃな。
end