本気と冗談
あの後、文は右腕を少しだけ怪我した。今は包帯が巻いてある。霊夢は奇跡的に無事だった。
「……あんた、一応永遠亭行っときなさいよ」
「はは、大丈夫ですよこれくらい。一日で治ります。霊夢さんは本当に怪我はないのですね?」
「ん、掠り傷一つないわ」
「そうですか、それは良かった、うん。霊夢さんは人間ですからね、怪我をしたら万が一ということもありえますから」
良かった良かった、と文は頷いている。
「心配し過ぎよ」
「いえいえ、言ったでしょう? ほら、私は貴女に魅かれてますから。そんな面白そうで興味尽きない取材対象が――じゃなくて、大切な人が傷付いたら悲しいですから」
「はぁ……あんたはどこまでが本気でどこまでが冗談なのか分からないわ」
「……私本気ですよ、いろいろと、多分ですけど」
「え?」
「ではでは、私は今日は自宅療養します。さようなら、そしてまた明日」
「ちょ、逃げるように去るな! 今の言葉どういう意味よ! というか、明日も来る気!?」
明らかな営業スマイルを一つ、最後に残して文は飛び去った。
追いかけようにも、さすがに霊夢といえども、文のスピードには到底追いつけない。
「……なんなのよ、もうっ」
明日来たときに、絶対問い詰めてやる。
そんな思いを胸に、霊夢は居間へと戻ることにした。