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卯乃花ことは
卯乃花ことは
novelistID. 12090
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仔羊は迷ってばかり

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「ん…っふン…」アトスの口から、早くも、とろけた声が漏れる。うはー。きもちいいねー。これ。
「ぅ、んぅ…」舌を絡ませて、存分になめまわして。今日はまだ酒くさくない。アトス本来の味。
二分くらいたったかな? やっと放してやると、アトスのおっさん、「はぁ…」って息ついて、へたりこんじゃった。んー。おれってテクニシャン。
「ポルトスまで、なんなんだよぉ…?」こぼれたよだれをぬぐいながら、なんか、涙声になっちゃった。ごめんね。
「いやあ、アラミスがね? きみがベッドの中でどんなにすばらしいか、とっくり聞かせてくれたもんだから、味見」
「うそ!」「…アラミス?」
うそ八百。
基本的におれは、波風立てるの好きじゃない。幸せカップルの、気楽な傍観者の方がおいしいってもんだ。
だけど、今回は別。お仕置き。
アラミスを怒らせたのは、確かにおれ。からかっちゃおうと思ったのも否定しない。
けどね。
あの怒り方はいただけない。だってそうだろ、おれに対するセーブのために、アトスの名誉がガタガタじゃないか! おれはそういうの、ゆるせないの。
素直にのろけりゃ、よかったものを。
「アラミス…ちょっとこい」「っは、い!」
案の定、さっきまでのにこやかな空気はどこいったってかんじで、アトスはアラミスを…このあと、どうするのかな。
ま、あとは二人でやってくれや。これにこりたらアラミスも、おれやダルがアトスにちょっかいだしても強く出られないだろ。目には目を。牽制には牽制をってやつだ。
アトスがどう思うかは別問題。それはアトスが考えりゃいいの。
「ふんふんふーん」音符をとばして陽気に鼻歌なんかうたいながらも。
おれは心の中でこう、つぶやいたね。
(神さま…あなたのかわいい仔羊たちは、とんでもなく方向オンチですよ)
って。



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