タイトルなし
ボーカロイド。歌うソフト。
そんな認識しかない俺が、何気なく買ったのは男型のボーカロイドだった。
女の子型ボーカロイドが店頭で歌う姿は衝撃的で、その歌声に興味が惹かれたというのもある。
巷で人気の初音ミクに興味がなかったわけじゃないが、如何せん音楽は好きだがもっぱら聞く専門の俺には、それぞれボーカロイドの特性の区別がつかなかった。
そこでボーカロイド持ち友人に何がいいかと聞き、勧められたのがKAITOだ。
購入後に理由を聞いたら、「俺持ってないし、使うやつがあまりいないから」と、明らかに初心者向けとかは一切考慮してない理由で、半ば騙された気分だ。
買うまで一切そんなことを言わなかった友人を半ば恨みつつ、とりあえずパソコンにインストールしてみる。
「よろしくお願いします、マスター」
しばらくして、そう言ってモニターに現れたのは、青い髪の男だった。
優しげな笑みと、柔らかな声質に、女の子に人気があってもいいものだが、と思う。
そのままにして説明書を見ていると、不意に男の表情が曇った。
「……マスター、僕の声が聞こえませんか? 音量が下げてあるのかな……?」
「へ?」
パソコンから聞こえたのは、切ない呼びかけ。
思わず顔を上げると、男の顔に笑みが戻った。
「よかった、反応がないから……声が聞こえてないのかと思いました」
「……え? は?」
「マスター?」
首を傾げている男を視界の端に留めつつ、わけがわからず説明書を見る。
ただの音楽ソフトじゃないのか、と細かい字の羅列を目で追っていると、ぬるりと、ディスプレイから何か出てきた。
「マスター……」
頬に触れてきたのは、低い体温の、指先。
止まる思考を余所に、それはディスプレイからはいでてきて。
「ぎゃああぁっ?!」
叫びながら、俺は思わずそいつを殴り飛ばした。
そんな認識しかない俺が、何気なく買ったのは男型のボーカロイドだった。
女の子型ボーカロイドが店頭で歌う姿は衝撃的で、その歌声に興味が惹かれたというのもある。
巷で人気の初音ミクに興味がなかったわけじゃないが、如何せん音楽は好きだがもっぱら聞く専門の俺には、それぞれボーカロイドの特性の区別がつかなかった。
そこでボーカロイド持ち友人に何がいいかと聞き、勧められたのがKAITOだ。
購入後に理由を聞いたら、「俺持ってないし、使うやつがあまりいないから」と、明らかに初心者向けとかは一切考慮してない理由で、半ば騙された気分だ。
買うまで一切そんなことを言わなかった友人を半ば恨みつつ、とりあえずパソコンにインストールしてみる。
「よろしくお願いします、マスター」
しばらくして、そう言ってモニターに現れたのは、青い髪の男だった。
優しげな笑みと、柔らかな声質に、女の子に人気があってもいいものだが、と思う。
そのままにして説明書を見ていると、不意に男の表情が曇った。
「……マスター、僕の声が聞こえませんか? 音量が下げてあるのかな……?」
「へ?」
パソコンから聞こえたのは、切ない呼びかけ。
思わず顔を上げると、男の顔に笑みが戻った。
「よかった、反応がないから……声が聞こえてないのかと思いました」
「……え? は?」
「マスター?」
首を傾げている男を視界の端に留めつつ、わけがわからず説明書を見る。
ただの音楽ソフトじゃないのか、と細かい字の羅列を目で追っていると、ぬるりと、ディスプレイから何か出てきた。
「マスター……」
頬に触れてきたのは、低い体温の、指先。
止まる思考を余所に、それはディスプレイからはいでてきて。
「ぎゃああぁっ?!」
叫びながら、俺は思わずそいつを殴り飛ばした。