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ドラマチック (静雄×臨也/童話パロ)

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霧深い森の奥にその城はあるという



石造りの外観はかつての荘厳な趣きを忘れ、繊細な細工の施された飾り窓は風害ですっかり錆び付いている。
透明度の高かったガラスはひび割れや擦り切れが目立ち、時折風に揺られるカーテンは色褪せ、かつての豪奢な臙脂色が霞んでいた。
長い年月をかけて人々の記憶から忘れ去られたその城に、怪物が暮らしているとの噂が立ちだしたのはいつの頃か定かではない。

いわく、巨大な岩を片手で持ち上げ粉砕する
いわく、拳の一振りで地面に大穴を開ける
いわく、人間を捕らえ、挙句に喰らってしまう
森の奥から轟音を、悲鳴を聞いた者もいる、と。


猟師ですら近づかないその森に、今軽やかに足を踏み入れる細身の人間が一人。
その男の名は…

**********************************************

一日前――

 「あ、それ俺が行く」

緊張感なく挙手したのは、ニートもとい自営業もといみんなの街の情報屋・折原臨也(21)だった。
おりしも幼馴染みである岸谷新羅の父・森厳からかつて折原家で騒動があった際に森に住む怪物の力を借りたこと、手助けする条件として折原家の娘を一人、花嫁に差し出す約束をしていたことを告げられた直後のことだった。
今は遠い異国に住んでいる親の取り決めとはいえ理不尽な話であるが、話を振った途端あっさりと長男が了承してしまったのだから世の中どうなるか分からない。
怪訝な顔をする妹二人の視線をもろともせず、臨也は特徴的な赤い瞳をキラキラと輝かせ、祈るように指を組み立ち上がった。
「だって怪物だろ?化け物だろ?人間じゃないんなら俺の愛の対象外なわけだけど、たまには鑑賞にすら値しない粗大ゴミを見て俺の愛を再確認するってのもいいんじゃないかと思うんだよね。あと使えそうな奴なら俺の手駒として飼い殺してもいいし、それすら期待できなさそうなら適当に毒でも持って弱ったところを国王にでも進言して退治させれば国は安泰、ふもとのこの街の住人も安心。ついでに国王からの信頼も得られて俺も損はない。素晴らしい話じゃないか。化け物万歳だ」
どう考えたって臨也の思う壺じゃない?森厳の横でお茶を啜っていた新羅が呟く。
「ていうか臨也、話聞いてた?化け物が望んでいるのは花嫁さんだよは・な・よ・め・さん。君はどう見ても男だよ」
臨也はニンマリと微笑む。悪いこと考えてる顔だなぁ。新羅はそっと目を逸らしてもう一口
お茶を煽る。
「そんなもん、適当に誤魔化したらいいんだよ。最近じゃ男が花嫁になれるんですよーとか昨日まで女だったんですけどーとか。最悪女装してやってもいいし。あ、セックスは嫌だけど。化け物に抱かれる趣味はない」
咄嗟に黒い影を伸ばして妹二人の耳を塞いだセルティにGJと賞賛を贈りつつ新羅はじゃー決定で、と解散の意を告げる。
それじゃあ俺、支度するからね!とスキップしながら自室に向かう兄を妹たちは涙ながらに見送った。
「ばいばい臨兄ー!!お嫁に行ってもたまには帰ってきてねー!!!!!」
「………費………頼(生活費よろしく)」



「あのね、行くのは明日だからねふたりとも。あとなんでそんなに嬉しそうかなぁ」