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ドラマチック (静雄×臨也/童話パロ)

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「………テメーもすぐにいなくなる……」
酷薄そうな笑みを口の端に浮かべて男がぽつりと呟いた。
「どいつもこいつも口先だけだ…俺の本性を見ればすぐに俺から離れていく。化け物だと遠巻きにする。追いかけると逃げていく。名前を呼んだら泣いて謝る。利用しようと親切な顔して近づいて、無理とわかれば殺そうとする。 
人間なんざ皆そうだ…だから俺は…」
そう言って項垂れた男はそのまま黙り込んでしまった。
男が続きを口にするかとしばし耳を傾けていた臨也だが、言葉がフェードアウトしたと分かると下を向きこっそり舌打ちした。
辛気臭い男だ、顔はいいのに幸薄そうだし。 
呆れながらも臨也はほくそ笑む。
だがこの力はなかなか魅力的だ。いずれ大きな利益となる。他のお手つきになる前に懐柔しておけば今後かならず役に立つ。
臨也がもう一度顔を上げると、不安げにこちらを見つめる男と目が合った。
これまで臨也が数多に受けてきた、不安と期待と猜疑に満ちた弱く愛しい人間の証。
化け物のくせにこんなとこだけは人間のフリか。
心の裡は表には出さず、にっこりと微笑む。男の眉間の皺が深くなる。
「キミを遠ざけた人間はかつて何人いたのかな。10人?100人?それとも1000人かい?なら俺を、キミを受け入れた最初の人間にしてよ。そのために俺はここにきたんだから」

そういって臨也は男に手を伸ばした。
佇む男は困惑しているのか、差し出された細く白い指から視線を外し、恐る恐る臨也を見つめる。
臨也は持ちえる最大の努力でもって微笑んで見せた。
じっと見つめれば、息を呑んで見つめかえしてくる。
やがて男の琥珀色の瞳がじわりと色を濃くし、あどけない子供のような笑顔が浮かんだ。
驚いて瞬きをした一瞬の間にバルコニーから男の姿が消え、臨也はひゅっと息を呑む。
男は臨也の目の前に降り立っていた。
間近で見た彼の瞳は、夜空を映し込んで星のようだった。

「………お前… 、名前は?」

「いざや、折原臨也……」

いざや、いざや。男が呟く。
向かい合った男は臨也より頭一つ分大きかった。
些か気に入らないが、男の強張った笑顔がまるで警戒心を押し殺した野生の獣が必死に爪を引っ込めているようで臨也は胸がすっと晴れるような優越感を感じた。
まるで今日が世界の終わりみたいな不幸いっぱいの表情で、縋るみたいに臨也を見つめる男の頬に臨也は手を伸ばした。
男はびくっと身体を震わせたが、振り払うでもなくされるがままに大人しくしている。

「……なんでキミ、泣いてるの」
「泣いてねぇよ」
「うそつき。俺、夜目が利くんだよ」
「だって泣いてねぇし」
「ねぇ」
「なんだよ」
「名前、教えてよ。こんなときなまえもよんであげられないなんて俺いやだよ」

「静雄  、平和島静雄」
「シズちゃん、」

「シズちゃん」
「シズちゃん」
「シズちゃん」
「シズちゃん」


何度も、何度も名前を呼んだ。
だって彼の涙が止まらないから。


静雄が瞬きするたびにあとからあとからなみだがこぼれる。
臨也は笑い出したい気持ちを抑えて、ゆっくりと男の、静雄の頬や髪を撫でながら口付けるように名前を呼び続けた。



孤独で傷つきやすい、いとしいいとしいおれだけの獣。
もう彼の目蓋の裏には俺しかいない。








そのじじつにおれの目蓋がふるえたのはきっと気のせい