喪明曲
05愛を水底に
漆黒の眼、夜に溶ける黒い髪、
灰の煙を身に纏いながら君の心はいつも刃のように鋭く輝く。
碧緑の眼、日の光が似合わない明るい茶の髪、
いつだって冷えきっている心を持つお前はまるで真冬のようで。
その眼は真っ直ぐこちらを見てくる。息が詰まるほど、射抜かれるほどに。
その眼を見ていると怒りや憎しみや嫌悪に囚われる。
その眼にあるのは渦巻くどす黒い影のような感情ばかり。
(光があったからこそ、影が生まれていたはずだったのに)
(影の色が強ければ強いほど、光の眩しさもまた強いはずだったのに)
(わたしたちは、その光を見失ってしまった。)
この眼に映ったのは何だったのだろう。
(お互いの姿だったのに)
そんなものはもうわからない。
(見えなくなってしまった)
あぁ面倒だ億劫だ。
こんなものは邪魔なだけだから消えてしまえばいい。
こんなものは見えなくていい、必要のないものだ。
沈めてしまえ、奥底に。
「いずれ殺してやるよ」
(沈めてしまった、暗い底に)
(だけど消えてくれなかった)
(残ってしまった、心の水底に)
(ひっそりと息をひそめて)
(ひっそりと目覚めの朝を待つ)
(この眼がもう一度光を見る時まで)
(それが、ほんとうの悲しみのはじまり)
20080502//喪明したふたり