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斉藤君の殺人クラブ観察日記

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#1


 一九九五年六月某日。照明をともさずカーテンも閉め切った薄暗い部室に七人の男女が寄り集まり、奇怪な会合を開いていた。
 
「諸君。今日集まってもらったのは他でもない、我が殺人クラブの次の活動について話し合う為だ」
 眼鏡を押し上げながら口を開いたのは、三年の日野貞夫。教師陣に一目置かれる程の優等生で、所属する新聞部でも、ともすれば部長の朝比奈以上の実力で部をまとめあげていると評判だ。しかし彼は、学校非公認のクラブ──殺人クラブの部長という、普段の行いからは想像もできないような裏の顔を持っていた。
 
「そう。やっと活動するのね。それなら私、殺したい相手がいるわ」
 日野の言葉を受けて最初に口を開いたのは、三年の岩下明美。長く美しい黒髪を掻き上げて、妖艶な笑みを浮かべる。
「おや、岩下さんもでしたか。実は、僕もなんですよ……イヒヒヒ」
 俯きがちにしていた顔を僅かに上向けて不気味な笑い声を漏らしたのは、二年の荒井昭二。
「奇遇だな、俺も殺りたい奴がいるんだ」
 ニヤリと笑って腕を組み直したのは、三年の新堂誠。
「実は僕もなんですよ、ウフフ」
 肥えた身体を興奮気味に揺らすのは二年の細田友晴。
「私も、目障りな奴がいてぇ~!」
 にっこりしながら表情とはうらはらな事を口にしたのは、一年の福沢玲子。
「僕にも心当たりがないわけじゃないんだけどね、日野様。どうなんだい?獲物はもう決まっているのかい?」
 ニマニマと緩んだ顔で踏ん反り返る三年の風間望の問い掛けに、日野は軽く頷くと、声のトーンを低くして告げた。
 
「最近、坂上に身の程知らずの蛆虫がまとわりついている──こいつだ」
 取り出した写真を、勢いよく黒板に叩きつける。そこに写っていたのは、これといった特徴のない、ごく普通の男子生徒だった。
 しかしそれを目にした瞬間、日野以外の全員が目を丸くする。
 
「あら」
「おや?」
「お」
「うわ」
「あっ」
「わお」
 
「ふむ。その反応を見ると、どうやらお前達が殺りたいと考えていたのもこいつだな?──坂上のクラスメイトの斉藤だ。坂上とは名簿が近いことから親しくなったようだな」
 六人の様子に日野は愉快そうに喉を鳴らし、一応、彼についての説明を始めた。
「んなこたどうでもいいんだよ」
「そうだよ日野様。彼が斉藤君だろうが後藤君だろうが、邪魔だって事には変わりないからね」
「ですよねぇ!早く殺しちゃいましょうよぉ!」
 新堂、風間、福沢はあからさまに気が急いているようだが、他の三人から垂れ流される殺気も似たようなものだ。それほど彼らは最近の斉藤の行動を快く思っていなかったらしい。
 日野は自分の事を棚に上げて苦笑した。
 
「まぁ落ち着けよ。慌てなくても獲物は逃げないからな。とりあえず、お前らひとりひとりに斉藤の罪状を聞いておく。先ずは岩下、お前は斉藤の何が気に入らないんだ?」
「坂上君に悪影響を及ぼすからよ。あいつの前だと、坂上君たら、言葉遣いが荒くなってしまうの」
「ああ、それは俺も許せねぇな。言葉遣いってより、俺達に対するより砕けた口調になるのが気にいらねぇ」
「彼、四六時中坂上君にべったりで、羨ましいですよね。坂上君の親友は僕の筈なのに……」
「君達、もっとよく見なきゃダメだよ。あいつは、それはいやらしい手つきで坂上君に触るのさ。下心があるとしか思えないねぇ」
「それは貴方のことでは?」
「人聞きの悪いことはいわないでくれよ河童君。もちろん僕の場合はちゃんと坂上君の同意の上だからまったく問題ないんだよ?」
「坂上君は優しいから拒めないだけですよ。彼が嫌がっているのがわからないなんて、貴方も可哀相な人ですね」
「おい、お前ら、ケンカは後でやれ。で?荒井と福沢はどうなんだ」
 延々と続きそうな風間と荒井の舌戦に割って入り、日野はまだ答えていないふたりに回答を促した。
「そうですね……彼は坂上君の友人として相応しくありません。愚かすぎるんですよ」
「だってあいつ、絶対坂上君に恋してますよ!時々、飢えた狼みたいな目で坂上君のこと見てるんだから!ホントキモーイ!」
 福沢の意見に、日野は頷く。
「その通りだ。斉藤の最も罪深いところは、坂上に思慕を抱いているということだな」
「そうね」
「万死に値します」
 
「で、どうやって殺す?」
 新堂の一言で、会合はようやく本題に入った。