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臨也さん襲い受けのシズイザ

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ふと、どれくらい昔か分からない事が頭を過った。
何故だろう?そう思う暇すら、今の俺にはなかったけれど。

「いざ…やっ…クソっ…!!」

俺は今、シズちゃんの上に跨っている。
借りてきた猫のように程良くニコニコと笑い、無害を演じる事が半年も続けば、シズちゃんは簡単に油断した。

具体的に言うならば、俺に向けて笑ったのだ。

初めてだった。
誰かに向けられたものではなく、俺だけに向けられた笑顔だなんて。


笑いたくなるような自分を抑えながら、俺はやりたくてやりたくて仕方無かった事を実行に移す。

人の感情を良くも悪くも揺さぶるのは大好きだ。見た事がない表情、行動。その全てが、俺は知りたい。


そしてこの化け物にも、同じような起伏があるのか。
今の俺は、その興味だけで動いている。



人の許容範囲をかなり上回る量の薬を盛って、動きを鈍らせれば、両方の手を縛り上げる事は左程難しい事ではなかった。

太ももの上に乗り上げて、両足の抵抗も防いでしまえば、あとはもう料理されるのを待つだけの獲物でしかない。今はただ、嵌められた怒りにだけ染まる顔が、これから何をされるのか理解した後、どんな色になるのかが、俺は楽しみで楽しみで仕方がなかった。

見た目よりもずっと触り心地が良い頬へと、指を這わせる。明らかに性的な色を含む動きで触れれば、意味を理解しきっていない獲物は擽ったそうに顔を背けた。それによって露わになった首のラインに、特に思慮無く舌で触れる。うっすらと汗をかいている皮膚は、独特の味を舌の上に広げる。あまり、心地良い味ではなかった。けれど――

「っ…てめ、何…して…っ!」

薬で縺れる言葉を必死に紡ぐ姿は、背筋が痺れる程に刺激的だ。あの、平和島静雄が、俺の策略を前に無様に蹲っている。今、彼を殺すも生かすも――嬲る事ですら、選択肢の全ては、俺の手のひらの上にあった。


ぞくぞくした。
この男の全てを手に入れたかのような錯覚。

いや、今この瞬間に限定するなら、これは錯覚などではない。ただの、事実。そう呼んで差し支えがないだろう。


「ねぇ、シズちゃん」

「…………?」

焦点がいまだ完全には合わない瞳が、俺を見た。
俺は、その瞳を何よりも愛しげに見つめる自分に、気付いている。

本当は、ずっと前から気付いていた。
俺が本当にしたかった事。それは今叶い、そして今、終わろうとしている。

「愛してあげようか?」

「―――はっ、誰が…テメェなんか、にっ…ぅ、あ?」

「大丈夫。そこらの女じゃ、二度とイケないようにしてあげるから」

気持ち良いらしいよ?俺のナカ。
猫を被っていた時の笑顔でそう告げれば、シズちゃんの瞳に憐れみの色が宿ったように見える。

それが見たくなくて、噛みつくように口付けた。









"いつまで、気付かないふりをするつもりだい?"

どこかで聞いた台詞が、心の奥を殴りつけるように響いていた。

まるで、こうなる事を予測していたような言葉だと――あの時の不快さに、俺はようやく理由をつける事が出来た。








俺は君が欲しかったんだ。
(こんな手段ではなく、真っすぐな方法で)












でもね、俺は
こんな方法しか、知らないんだ。











end