臨也さん襲い受けのシズイザ
「いつまで、気付かないふりをするつもりだい?」
ナイフを突き付けても、別段怒らない奇特なクラスメイトが呟いた言葉に俺が感じたのは
まぎれもない、不快だった。
「どういう意味だい?」
「意味なんてないよ。そのままだ。私はね、静雄の事を…そして勿論君の事も、友達だと思っている。それこそ、数少ない、ね。だからこそ、あまり悪い方には進んで欲しくないと思うんだよ」
「何言ってるんだい、新羅?俺とシズちゃんが悪い方向に進まないわけがないじゃないか。シズちゃんが俺の手駒になってくれれば話は別だけどね」
「わぁ。それってどっちにしろ静雄にとって良い事が一つもないね」
そう言って笑った新羅の顔は、いつもと変わらず――
それでいて、どこか憐れみを含んでいるように思えた。
俺は先程の感情と、寸分違わず同じ物をその笑みに対して抱いた。
聡い友人は、恐らくそれに気付いて居ただろう。
笑みに悲しみを含ませた後、それから同じ話をしてくる事は一度たりともなかったのだから。
作品名:臨也さん襲い受けのシズイザ 作家名:サキ