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【ガンダム00】下弦

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 きっぱりと言い返され、ロックオンは困惑した。ティエリアは依然背を向けたまま、相手の表情を見ようともしない。
 紫色の髪が月の光に反射して、綺麗に天使の輪を作り出している。
 ロックオンはそんな彼の後姿を見つめていた。
「リーダーのあなたが死んでどうする。自分の立場をもっと考えて欲しい」
 ハッとした。そして機内で何度も自分に呼びかけるスメラギの声を、そして滅多に取り乱さないティエリアの必死な声を思い出した。
「……ああ…ああ、そうだな」
 手の平で顔を覆い、自分の愚かさに苦笑が漏れた。ティエリアが危惧していることは、自分が欠番した後の組織への損害や皺寄せのことだったかもしれない。けれど、常に冷静沈着な彼が作戦中に取り乱すことなんてあっただろうか。これまでにあんなに必死に人の名を呼ぶ彼の声など聞いたこがあっただろうか。自惚れでも構わない、けれど自惚れではないだろう。彼は彼なりに自分のことを心配してくれていたのだ。そんな核心がロックオンの中に芽生えた。
 きっとティエリアも恐れを感じたのかもしれない。――仲間を失うことへの恐れを。
 ロックオンは紫色の頭を見て微笑み、そしてその頭をぐしゃっとかき混ぜた。
「悪かったなティエリア。そんでもって――サンキュ」
 久しぶりに心から笑みを零せた気がする。
 ティエリアは鬱陶しそうに手を振り払うと、一度も振り返ることなく無言でコンテナへと戻っていった。
 そんな後姿を見てロックオンは少し、ほんの少し、心が温まったような気がした。   




2008.8.17