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レイ・イチ ~けったいなお人は好きですか~

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レイが何事かと首を傾げていると、イチは耳まで赤くなりつつ何やらレイに差し出してきた。
レイがイチの手元を見ると、小ぶりな袋を持っていた。

「え、これ?もしかして・・・?」
「つ・・・作った。」

これ以上ないかというくらい赤い顔で俯いたままイチが言った。
レイは無言でその袋を受け取った。

しばらく無言の空間。

「あ、えっと、あ、開けていい?」

その空間を破ったのはレイ。
呆けたような声を出した。
イチは無言でうなずき、さっと向こうにある椅子に向かって行った。

簡素に閉じられている袋を開けると、そこにはこれまた簡素な丸いトリュフが5つほど入っているだけであった。
だがその丸いトリュフを見た瞬間、レイは愛しさがいまさらながらにこみあげてきた。

やんちゃで恥ずかしがり屋なイチ。
これをどんな顔をして作ったのやら。
それも今日きっと、本来なら女の子が渡す日と決めつけていたであろうイチが自分の為に作ってくれた・・・。

「イッちゃん、ありがとう・・・ほんとに嬉しいよ。ねえ、もう食べていい?」

向こう側を向いて座ってるイチにそう言いつつ、近づいていった。

一方イチはドキドキしていた。
男である自分がバカみたいに手作りチョコを作っていたこと。
それをどうやってレイに渡そうか悩んでいたこと。
レイが女の子からの贈り物を一切断ってくれていたこと。
自分に当然のようにチョコを用意してくれていたこと。
そして、他人からモノをもらうのが苦手なレイがこれまた当然のように受け取って食べていいかと言ってくれたこと・・・。

「あ、当たり前だろっ。なんの為に作ったと思ってんだよバカ。」

口ではこんな言い方しかできないけど、後ろでレイがふっと笑ってくれているのが分かる。

イチもドキドキしたまま、レイがくれた包をあけ、自分があげたものとは雲泥の差の綺麗なチョコを一口食べる。

「うん、イッちゃん、凄い美味しい。さすがだね。こんな美味しいの、食べた事ないよ。」

後ろからふわっと包み込むように抱きしめられてそう言われた。

「な、何言ってんだよ・・・。お前がくれた奴のが断然うまいのに・・・」
「ふふ、一番に食べてくれたんだね・・・ありがと。・・・イチのが美味しいよ、だってすごく愛情こもってる・・・。」

その言葉になおさら赤くなったイチをさも愛しいものを見るようにニッコリ横から見て、レイはイチの頬に口づけをした。