あなたとシド
学び舎があれば、都合がよくも大抵付近にはコンビニに食堂に喫茶店の一つや二つがあるものである。ギルベルトは、新作らしいハニーオレンジティーをティースプーンで掻き回しながら返した。この男、ちゃらけてゴツい相貌に反した内情を数個と持っているらしい。例えば、面倒見が良く初対面に近い相手のアフターケア迄欠かしていない所だとか。アルフレッドは下から覗きこむ形で、ギルベルトを一瞥した。しかしそれは実は如何せん過大評価であって、金髪と蒼眼を持ち又弟という名を余しているアルフレッドを放っておけなかったなどと内輪に滅法穏やかな彼らしい理由がある。
だが放課後のカフェに大の男子が二人、身を潜めるようにしてひそひそ声を交わしている。世間話か、世話話か、何れにしても同じような目途の女子高生にとっては恰好の餌であった。
「…で。あの眉毛は置いといても、てめーと俺も初対面みてえなもんだろ。こんな無理やり連れて来て、何の話だ」
いとまを潰すとか気障に思案していたギルベルトだが、今はこの居心地の悪さの方が耐え難い。足早に口を開く。
アルフレッドも同じことに冷汗を垂らしていたようで、一息置いてから呼応して口を開いた。
「早速だけど、さっきの反応見てると君、アーサーのこと結構タイプなんじゃない?」
「……は?」
「分かるよ。顔だけは可愛いからね、童顔だし、あの眉毛が無ければまだって俺だって何度思ったことか!あんな女の子みたいな性格もしているから、相応に男に人気があるっていうのは君だって知っているだろう?
それで、君…ギルベルトだっけ?がつい昨日ローデリヒに振られた、っていうのも聞いたんだ」