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四半世紀ぶりの再会

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 その表情に、知らずカザモリ隊員の胸が熱くなる。彼等は今でも自分の事を大切に思ってくれているのだ―――!
 唇が震えそうになるのを何とか押し止め、カザモリ隊員は肯定する為に口を開いた。
「はい、本当―――」
 次の瞬間、
「カザモリ君!」
 後方から咎めるような響きを持って、缶コーヒーを両手に持ったサトミ隊員が声をかけた。カザモリ隊員が振り向くと、ゆっくりとした動作で彼に近付き、その隣に立った。カザモリ隊員に向けられた彼女の瞳は明らかに怒っている。
 今にも「一般人にそんな事話しちゃ駄目でしょ!!」という声が聞こえてきそうだ。
「あ、サトミ隊員、このお二方は―――」
 二人を紹介しようとカザモリ隊員が口を開くと同時に、先程まで真剣な表情をしていたソガが彼女に向き直った。打って変わって明るい笑顔を浮かべながら、懐かしそうにサトミ隊員に声をかける。
「はじめまして。確か現在ウルトラ警備隊には女性隊員が二人いたはずだね?」
 ソガに威圧的な顔を向けながら頷くサトミ隊員。
「ええ、そうですが」
「今は昔と違って、各それぞれに明確な仕事が割り当てられていると聞いたが、君は戦闘機乗りなのか?」
「ええ」
「異星人とじかに戦った事も?」
「あります」
 一体ソガが何を聞きたいのか解らない。それは旧知の仲であるアマギも同様らしく、不思議そうに質問を繰り返すソガを見ている。
「おい、ソガ。お前さっきから何を言っているんだ?」
「まぁ、いいから。もう暫らく黙って見てろ」
 再びサトミ隊員に向き直り、ソガは質問を続ける。
「巨大な怪獣と戦った事もあるんだね?」
「ええ、そうですが。それが何か?」
「どうやって倒したんだ?」
「それは勿論、ウルトラホーク1号で―――」
 言いかけて、サトミ隊員は口を閉ざした。彼女が何度か遭遇した巨大怪獣、または巨大ロボットを倒したのは、全てウルトラセブンだったからだ。ウルトラ警備隊が誇る戦闘機=ウルトラホーク1号や3号も出撃してはいるが、怪獣やロボットを倒した事はない。
 しまったという表情で黙るサトミ隊員を見て、ソガは唇の端を上げた。「やっぱりな」と、言う風に軽く頷きながら彼女から間を取る。
「アマギ、俺達の旧友はやっぱり地球に戻ってきてたんだよ」
 彼を見上げながら、ソガはしみじみと呟いた。ソガが何を聞こうとしていたのか解ったアマギも、同じようにしみじみと頷く。
「もしかしたら、どこかですれ違っているのかもな…」
 今、モロボシ・ダンはあなた達の目の前にいるんです!ここにいるんです!―――カザモリ隊員は胸の中で言葉に出来ない思いを叫んだ。名乗れるものなら今すぐ名乗りたかったが、隣にはサトミ隊員がいる。
 当のサトミ隊員は、ソガとアマギの台詞に眉間に皺を作っていた。
「俺達の旧友?地球に戻って来た?―――って、それはどういう意味ですか?あなた達はセブンの一体何々ですか?その口振りじゃ、まるで―――」
 困惑し、動揺しているらしいサトミ隊員に、ソガとアマギが改めて自己紹介をする。
「ああ、申し遅れた。私はソガ。元ウルトラ警備隊隊員」
「私はアマギ。同じく元ウルトラ警備隊隊員だ」
「…あ、じゃぁ、フルハシ参謀の……」
 口に手をあてて驚いている彼女に、ソガとアマギが微笑を浮かべ肯定する。
「ああ、同僚だったよ」
「私達はずっと昔に地球防衛軍を退役したがね」
 と、そこへカザモリ隊員とサトミ隊員のビデオシーバーからシラガネ隊長の声が響きだした。あわててビデオシーバー開くカザモリ隊員。
『K地区で異常な電波を受信した。すぐに急行してくれ』
「了解!」
 ビデオシーバーを閉じると、カザモリ隊員の肩にソガの手が置かれた。顔を上げて見ると、彼は少し寂しそうな微笑を浮かべていた。
「引き止めて悪かった。だが楽しかったよ。ポインターも近くで見れたし、セブンの事も確認が取れた。今日の出会いに感謝したい」
「そんな…」
 ここで別れたらもう二度と二人には会えない気がして、カザモリ隊員は何か言おうと口を開くが、そんなカザモリ隊員を他所に、ソガはアマギを見上げて勝ち誇ったように言う。
「俺の星占いの通りになっただろう?」
「偶然だよ」
「星占い?」
 っと、サトミ隊員。
 彼女を振り返り、アマギが現役ウルトラ警備隊隊員二人に説明をする。
「こいつの趣味は星占いなんだが、今朝、今日は懐かしい人に会うっと言い出して…」
「会っただろう?」
「懐かしいが、少し違わないか?」
「星占いをするんですか…」
 今もまだ、その趣味は続いてるんですね―――言えない台詞を心の中で呟くカザモリ隊員。
「もう若い頃からずっと。科学の時代に何故そんな非科学的な物を信じられるのか、解らんね」
 呆れた調子で言うアマギをソガは軽く睨んだ。
 だが、それはいつもの二人のやりとりらしい。再びカザモリ隊員に視線を戻すと、ソガはポインターに向かって顎をしゃくった。
「ところで、K地区に行かなくてもいいのかい?」
「あ!」
「それじゃ、失礼します!!」
 あわててポインターに乗り込むカザモリ隊員とサトミ隊員。カザモリ隊員はサトミ隊員に缶コーヒーを押し付けられながら助手席に納まり、彼女は運転席に乗り込みエンジンをかける。
 窓からソガとアマギを見上げ、カザモリ隊員は礼を述べた。
「ありがとうございました」
「嫌、こちらこそ」
 サトミ隊員がポインターを発車させる寸前、ソガは最後の言葉を口にした。
「久し振りに会えて嬉しかったよ」
「…え?…」
 その言葉の意味を聞けぬまま、カザモリ隊員を乗せたポインターはK地区に向かって走り出した。体を反転させ小さくなっていくソガとアマギを見る。やがて角を曲がって二人が見えなくなっても、カザモリ隊員は暫らく遠ざかっていく景色を見つめたままだった。
「何しているの、危ないわよ」
 サトミ隊員に促され、やっとカザモリ隊員は腰をおろした。脳裏に、最後のソガの言葉が流れる。
 ―――久し振りに会えて嬉しかったよ―――
 あれはどういう意味なのだろう?ずっとカザモリ隊員の事を「君」と呼んでいたのだから、ソガがカザモリ隊員を知らなかった事は確かだ。アマギもそれは同様だろう。それなのに、最後に「久し振りに会えて」と言った。それはつまり……
「気付いてくれたのか…。僕が、僕である事に…」
 例えどんなに月日が流れようとも、例えどんなに姿かたちが変わろうとも、彼等は自分に気付いてくれる―――気付いてくれる…。
 四半世紀ぶりの再会を、モロボシ・ダンは心の底から感謝した。
「僕も…久し振りに会えて嬉しかったですよ……ソガ隊員、アマギ隊員」




 End
作品名:四半世紀ぶりの再会 作家名:uhata