ホップ、ステップ
モッシュの波に流されて、見る間に理央と離された。飛び跳ねる生徒たちの肩や腕が接触を起こして地味に痛い。
それでも確かにそこには暴力的なまでの熱が溢れていた。なまなましい感覚が躍動しながらきらめいていた。
振り上げられた拳の向こうに政春の晴れやかな笑顔が滲む。数10センチの雛壇に、どうしようもない距離を感じる。
隣に居て当たり前だと信じていた相手が、今はなんだか酷く遠い。
不意に、政春の視線が人ごみをすり抜け明良を捉えた。一瞬唖然とした表情を見せて、それから彼はまるで嬉しそうに笑う。
明良に初めて見せる、酷く不思議な甘さで、笑う。
「やべぇ、マジ気合い入る」
「は、」
「こんなんじゃ全然足りねぇよな!次行くぜ次!!」
いつの間にか明良の隣に近付いていた理央が、その耳元で呟いた。
「あーあー、なんかスイッチ入っちゃった。……あれ?明良?」
「へ?あ、なに?」
弾かれたように振り向いた明良の顔は、朱をはいたようにして赤い。
「終わったらちゃんと政春に、かっこよかったって言ってあげようね」
それだけ告げて、理央は眼前の幼なじみたちの行く末をひっそりと祈る。
案外ゴールは近いのかもしれない。