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黒鳥 キョウ
黒鳥 キョウ
novelistID. 12283
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黒猫のワルツ

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――黒猫のワルツ


暴力青年の食生活






まったく、人間とはほんとうに仕方が無い。
僕は呆れ半分で肩を竦めた。
といっても、今の僕は猫の姿なので、心の中で、になるけど。

人間は賢く、力があり、なにより面白い。
だから、人間として生活するのは楽しいし、飽きない。

でも、人間は察しが悪い。
だから、妙なこと考えるんだ。

僕を抱っこしている青年が化け物?
馬鹿馬鹿しい、有り得ない。

彼は、力が強く頑丈なだけの、臆病な人間だ。

まあ、確かに沸点の低さと怪力を考えれば、そう言いたくなるかもしれない。
それでも、彼―平和島静雄は人間に過ぎない。
だって、人間以外の姿になれるわけでも無いし、どんなに努力しても精々100年生きれれば良いほうだ。
こんな根本的な事を忘れるのは、察しが悪いからだ。

静雄さんの臆病さにみんな気が付かないから、化け物なんて言うんだろう。

・・・・鈍いんだよね、人間って。

僕は静雄さんの肩越しに夕日を眺めながら、思考した。

「そうだ。ちょっとスーパー寄ってくな。」

静雄さんが指差しながら言った。
そこには一軒のスーパー。
どこにでもあるチェーン店だ。
ここに、スーパーあったんだ。
僕が眺めてると、静雄さんが聞き捨てなら無いことを言う。

「お前のご飯・・・猫缶飼ってくるから。」

「ちょっと待っててな?」と言う静雄さんを凝視した。
猫缶だってっ!?

『何言ってるんですか!!』
「ぶっ!!」

僕は感情のまま静雄さんの顔面を尻尾で強打した。
頑丈な彼には、大した攻撃にはならないだろうが、思わぬ攻撃に静雄さんはビクついて足を止める。
そして、きょとんとした顔で僕を見た。
グラサン、ずれてますよ。
いや、そんなことより。

『缶詰ですって!?今、缶詰が僕のご飯と言いましたか、貴方!?』
「え・・・ええと、はい、言いました・・・。」

敬語になる静雄さんを他所に、僕は肯定の返事が気に食わなくて毛を逆立てて、「シャアッ!!」と唸る。

『何言ってるんですか!!食べませんよ、そんなもの!!』
「ね、猫缶は嫌か・・・?」
『邪道です!!缶詰なんて言語道断です!!』

そう。
よりにもよって缶詰だなんて!!

はっきりいうと、僕は人間の食品の缶詰は嫌いじゃない。
ツナ缶なんて、GJと言いたくなる一品だと思う。

しかし!!
ペット用の缶詰は無い!!
あれは邪道だ!!
特に、猫缶。
あれは無い。

僕は古くから生きている妖怪だ。
その僕に猫缶だって!?
無いだろ!!

「そ、そうか・・・邪道か・・・ごめん。」

しょぼん、とでっかい図体の静雄さんが項垂れる。
・・・しまった、熱くなりすぎた。
いや、でもこれは譲れない。
猫缶は要らない。
よって、買う必要も無い。

「それならよ・・・なんなら食べられる?」

おずおず、と静雄さんは僕を伺うように聞いてきた。
うん、こういう姿は以外に可愛いかも・・・?
僕は逆立った毛を落ち着かせ、静雄さんを見た。

『それより、静雄さんの家の冷蔵庫には今何があります?』

買い物の鉄則。
必要なもののみを買い足す。
これは基本だ。

基本を忠実に守るために僕はリサーチを始める。

「ええと・・・缶ビールとか、あと水・・・あ、ジャガイモとにんじんがこの間実家から送られたか・・・?」

「あ、あと、冷蔵庫じゃないけど米。」と告げられ、僕は絶句した。
成人男性の一人暮らしでは、冷蔵庫の中は大層わびしくがらんとしたものと聞いてはいたが・・・。
こ、この人・・・。

『生きる気あります・・・?』
「は?」

あれ、素で返された。
ホントに分かってないよ、この人。
ていうか、普段はどうしてるんだろう。

『・・・普段はどうやって食べてるんですか?』
「え?ああ、ファーストフードとか、レトルトとか、コンビニとかで適当に・・・。」

意識せず毛が逆立っていく。
間近で見ている静雄さんの声も小さくなっていく。
僕は再度「シャアッ!!」と唸って静雄さんの顔に猫パンチを決めた。

『なんですか、それは!?不健康極まりない!!』
「す、すみません・・・。」

悪いけど、そんな顔して謝っても駄目ですよ!!
僕は素早く静雄さんの腕から降りると、建物と建物の隙間に身を隠し、姿を変える。
人型になった僕は、驚く静雄さんを他所に静雄さんの腕を引っ張ってスーパーへ入る。

「お、おい!?身体大丈夫なのか!?」
「僕より貴方の身体の方が危険信号でしょう!?何言ってんですか!?」

「ちょっとの間くらい平気です!!」とぴしゃりと言って僕は静雄さんに買い物籠を押し付ける。
目を白黒させる静雄さんをせっついて、僕は言う。

「食生活を改めてもらいます!!少なくとも僕と暮らす間は!!いいですね!?」
「は、はい・・・。」

気圧され頷く静雄さんに満足しながら、僕は野菜コーナーへ足を運んだ。

余談だが、これを見ていた人たちが有らぬ噂を流される、と知るのはまだ先のことだ。




◆後書き◆
帝人くんの缶詰嫌いは単なる偏食です。
最近の猫缶はよく出来てるらしいです。
試食した友達が「ツナ缶より美味しい。味薄いけど。」って言ってました。
帝人くんは、やや年寄り臭い味覚です。
だから、偏屈なんですよ・・・。
作品名:黒猫のワルツ 作家名:黒鳥 キョウ