勇者の遺物
「いえ・・・陛下。あの時のあれは・・・冗談で・・・私が軽率でした」
「いや、でも確かに女になったお前は悪くないんじゃないかなーとかちょっと思った!本当に!だから・・・すまない・・・」
「いえ陛下の責任だと申し上げているのではなく、私も女なら陛下の世継ぎをはらめるのにと少し残念に思ったのは冗談ではございませんよ!?」
クラウがドン引いているのに二人が気づくまで、二人はお互い謝り続けた。
とりあえずフロワードの女部下二名にはお帰り頂いて、シオンとフロワード、クラウの三人で話し合う。
「あの女の子帰らせてよかったのか?」
姿が変わってしまった少女を気遣うクラウに、フロワードは首を振る。
「大丈夫ですよ。彼女、非常に楽しんでいたようですし」
そういえば先程のシオンとフロワードの気持ち悪い掛け合いの最中も少女は異常に目を輝かせていた。あの女の子強いんだな、とクラウは微妙に間違った認識をする。
「男に戻りたい!と強く念じて見てもダメ。俺も試しに一緒に念じてもダメ。・・・うーん・・・」
シオンは頭を抱えた。
「いっそ女として生きちゃえば?」
無責任男が爆弾発言をする。どうしてこいつをここにそのまま連れてきてしまったのかと、シオンは少し後悔した。
フロワードは気にした様子もなく答える。
「女性の体だと身体能力が落ちるのですよ。ですからそれは難しいですね」
そこかよ!と心の中でだけつっこみを入れるシオン。
しかしクラウは脳天気な顔のまま顔以上に脳天気発言をする。
「強い奴なんて沢山いるだろ。そいつを護衛につければいい。女になっちまったってのは伏せた方がいいな。時間がくれば自然と治るものかも知れねぇし。大丈夫だってなんとかなる!」
「私の知りうる限りでは一番の無責任発言ですね元帥閣下・・・まぁ、これだけ文献を漁っても戻る手だては見つからない・・・おまけに仕事が溜まりすぎてあまり時間を割けない・・・しばらくは様子見しかないですね」
クラウはノリノリで言った。
「しばらく俺が護衛してやろうか?男だったら死んでも嫌だが女だったら何かお前と仲良くできる気がしてきたぜ!」
こ、こいつ人事だと思って・・・とシオンは思わずにいられなかった。
フロワードはにっこり微笑んだ。
「死んでもごめんです」
「あれ!?」
「・・・しばらく王宮で暮らすか、フロワード」
シオンが発言する。
二人がシオンの顔を見る。
「一応王宮には俺がいるし、俺の警備の者も多くいる。多分、ローランドで一番安全な場所じゃないかと思うんだ・・・それに余り出歩いて人目に付かない方が良い。仕事でどうしてもここにくる用事もあるだろうし、いっそのことしばらく王宮に部屋を用意しよう」
フロワードは感極まった様子で一礼した。
「研究室も近いしな・・・クラウ、この件は他言無用だからな。カルネにもミラーにも言うなよ。言う時は俺から言うから」
「わぁったよ」
完全に部外者になっているクラウは適当に頷いた。
こうしてこの場はお開きになり、フロワードの女生活がしばらく始まるのだった。