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はじめての女生活

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「ようシオン。あいつの調子はどうだ?」
昼過ぎに気楽な様子でクラウがシオンの元を訪れた。
あいつ、というのはフロワードの事だろう。気になるなら直接聞けばいいだろうと思いつつ、シオンは応える。
「昨日と変わらず・・・朝研究室へ行ったっきり戻ってないな」
「ふぅーん・・・」
聞いておいて、あまり興味がない様だった。
(じゃ聞くなよ・・・)
「朝からいないのか・・・」
クラウは時計を確認して眉を潜める。
「もう昼過ぎだぞ?むしろ夕方に近い。遅すぎないか?」
シオンも時計を見る。
「・・・本当だ。道理で腹が空く訳だ」
「また飯抜きで仕事してたのかよ」
クラウはうげっと声を上げた。彼は事務作業が異常に嫌いなのだ。
「悪い、クラウ。お前も研究室に行ってくれないか?昨日のフロワードは平生を保っていたみたいだが、やはり心配だし・・・お前も解決策を出来る限りでいいから探って欲しい」
「部下に勇者の遺物について調べさせてる。そこんとこは心配すんな」
二人は顔を見合わせてニヤリと笑う。
「じゃ、研究室行ってくるわ。シオンは飯ちゃんと食ってろよ」
「分かってるよ、子供じゃないんだから」

フロワードは朝食を取って直ぐ研究室へ向かった。
仕事は食事の前に済ませてある。しばらくは研究室に籠もるつもりだ。
(不明な点が多いというのが問題だ・・・戻る手だてがあるのか。変わったのは見た目の性別についてなのか、それとも脳や思考に関係してしまうのか・・・それらについて分かれば対策のしようもある)
フロワードは未知や曖昧なものが嫌いな性分である。
この体になって不調を感じたことはまだないが、勇者の遺物によって作り替えられてしまったこの体が何に反応するかわかったものではない。
時間は昼を過ぎようとしていた。
しかし未だ何の収穫もなく、フロワードは苛立っていた。
(全く忌々しい・・・これで子が産めるならまだましだが・・・)
まだシオンの世継ぎを諦めていないフロワードだった。
思わず舌打ちしてしまったフロワードだが、次の瞬間立ちくらみを感じ、よろけて壁にもたれ掛かる。
(・・・?)
意識が遠のく。頭がくらくらして、腹部に痛みも感じる。
フロワードは気を失った。

「フロワード!?」
それ程心配していなかったが、研究室に来てみれば血の臭いがして、しかもフロワードは床に倒れていて、クラウは度肝を抜かれた。
「おい、しっかりしろ!」
慌てて抱き起こすと非常に顔色が悪いのがわかった。記憶にあるよりずっと縮んでしまったフロワードを抱きかかえ、医務室に運ぼうとする。
フロワードの太股を支えている片手に違和感を覚え、見下ろす。
「・・・!?」
片手が血で真っ赤に汚れていた。フロワードの服が真っ黒でわからなかったが、結構流血しているようでぐっしょりと重かった。
「血の臭いが・・・少し違う・・・」
クラウは眉を潜める。フロワードには目立った外傷もなく、どこから流血しているのかパット見では分からなかった。
とりあえず医務室へ連れていき、そこでフロワードを診せる。
「軍のものだ。なんか歩いてたらこいつが倒れてるのを見つけてな。悪いけど診てくれるか?」
身分を明かさずに頼む。余り騒ぎを起こしたくない。
老齢の医師はクラウに少しの間廊下で待っているように言い、クラウは言われた通りにする。中で医師と女性の声がして、直ぐ扉が開いた。
「生理現象ですよ。安静にしていれば明日には治るんじゃないですか?明日も安静にしていて下さいね」
フロワードは着替えさせられベッドに寝かせられている。クラウは未だ眠ったままのフロワードを見て目を丸くした。
「は?生理?」
「だから、月のものです。月経ですよ。突然来てしまったんでしょうか。下着には何も付いて・・・ってこんな事まで言ってはいけませんね。あなた、こちらの女性のお知り合いですか?」
クラウは開いた口が塞がらない。
答えないクラウに、医師は疑問の目を向けたが、直ぐに興味がないと目をそらす。
「ま、部屋に連れていって差し上げて下さい。ここで寝ててもらっても構いませんが」

「という事があってだな」
クラウの報告をシオンは聞いていた。
「フロワードはどうしてる?」
「直ぐに目を覚まして部屋に戻ってったよ。なんかフラフラしてて、やっぱショックだったんかねぇ・・・」
「そりゃいきなり女になったと思ったら生理まで始まって・・・俺だったらと思うと正直吐き気がする・・・」
「俺もだ・・・」
男二人は揃って青ざめる。
「部屋に行ってみるか。まだ昼食べてないんだろうし、差し入れ持って」
シオンの言葉に頷くクラウ。
フロワードにあてがわれた部屋に行き、ノックをする。
「フロワード、いるのか?」
「どうぞ・・・」
元気のない声が聞こえた。シオンとクラウは顔を見合わせた。
扉を開き、ベッドに横たわるフロワードの姿を確認する。
「フロワード大丈夫か?」
「えぇまぁ・・・」
起きあがろうとするフロワードを制し、シオンは言った。
「寝たままで良い。昼食まだだろう?とりあえず栄養の有りそうなもの持ってきたから」
「大変申し訳ございません・・・陛下のお手を煩わせるとは・・・私の事はどうかお気になさらず」
「俺も果物持ってきたぜー」
「元帥閣下も・・・」
フロワードは結構堪えているらしい。とてもしょんぼりしている。フロワードの周りだけ曇っているようだ。
「そ、そんなに落ち込むな!俺は大丈夫、昨日久しぶりに眠れたから仕事も捗った!お前の分はクラウが出来るところまでやるから」
「そ、そうだぞフロワード。明日には今日よりましな体調になってるだろうって医者もいってたし、時間の問題だって!」
いつもより大分小さく見えるフロワード(実際縮んでいる)に二人は妙に生優しかった。
女になったのが俺じゃなくて良かった、というのが二人の根底にあるようだ。
しかしフロワードは珍しく感動した様子であった。
「なんと・・・もったいないお言葉・・・」その美しい顔を少し赤く染めて言う。
(あ、可愛い・・・)
シオンは思った。
クラウは果物を机の上に置き言う。
「ま、俺も勇者の遺物について調べてみる。とりあえず今日は大人しくしてろよ。俺は先に戻ってるから」
「あぁ」
クラウは自分の仕事へ戻っていった。
シオンはフロワードの側に椅子を置き、そこに座る。
「お忙しいのではないですか?陛下・・・」
「いやいい。たまにはこうして部下と交流を深めなければ」
本心から言う。相手を理解しなければ、相手を上手に使うことは出来ない。
最近のフロワード像がぶれまくってるシオンは言った。
「たまにはこうして話をするのも良いだろう。あ、辛いのなら出ていくが」
「私は大丈夫です」
強がるフロワードにシオンは苦笑する。
「大丈夫な人間が倒れるとは思えないが。強がるなよ、俺の前でさ」
「・・・はい」
シオンは気さくな様子で言った。
倒れたり取り乱したり、そういうのとは縁が無いと思っていた相手の一面を知れて、すこし気さくに話しかけられるようになった。仲の良い部下に対するように話しかけると、フロワードは少し布団を自分の方によせ口元を隠した。
(益々可愛い・・・)
作品名:はじめての女生活 作家名:ハクヨウ