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エスケープ(ケンスケ→シンジ)

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カメラのファインダーを覗き込んで見る世界は、どこか非現実的で、何もかもが絵空事のようだった。レンズを隔てただけの距離だというのに、だ。しかし、ケンスケがそれを好んでいたのも事実だった。
平凡な毎日。使徒が攻めてくる以外は、これといった事件もない。たとえあったとしても、それらは少しもケンスケの琴線に触れるモノではなかった。平凡で平坦。使徒が例え来たって、ケンスケにはどうしようもないことだった。関わることはおろか、真実を知ることすら出来ない。ファインダー越しの非現実世界が美しい絵空事ならば、現実世界はひどくつまらないそれだった。
ケンスケは欠伸を噛み締めた。毎度おなじみの老教師の前時代への懐古が始まると、誰も彼もが授業不参加を決め込む。希少価値とも言える数人の真面目な生徒だって、耳タコの話には匙を投げるしかない。希少価値の筆頭である委員長の洞木ヒカリですら、騒がしくなる生徒達を注意しつつも、思考と視線は教師の話ではないものを追いかけている様子だった。恋する乙女の視線は、非常にわかりやすい。あんな健気な視線、一度で良いから誰かに向けられてみたいものだ。今回委員長から誉れ高くもそれを浴びているのは、ケンスケの友人その一であるが(気付きもしない幸せ者だ)。
なんてことのない、平和な午後の授業風景だった。空は青くて、教室は騒がしくて、今日もケンスケはここにいる。ファインダー越しではない、この現実世界に。
ぼんやりと時間を持て余すケンスケの耳に、喧騒を縫うようにカラカラと遠慮がちな音が届いた。視線を向けると、後方の戸から教室を抜け出る後ろ姿があった。あ、と思った時にはもう、ケンスケは鞄を引っ掴んでその背を追っていた(あの騒がしさでは、きっと誰も気付かない)。