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唇を手の甲に

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 生い茂る枝の向こうのかすがが、口をぱくぱくと二三度動かして顔を覆って座り込んだのが微かに見え、佐助も内心の笑いが口に出る前に口を覆った。
 こちらから相手の様子が手に取るように分かるということはすなわち、相手からもこちらが分かるということだ。
「なーにーかすがぁ? 口吸いとでも言えば満足したの? いやぁ、破廉恥な女だねぇー」
「わざと誤解を招くような言い方をするなっ!!」
「おおっと」
 すかさず飛んで来たクナイを避けた所で、かすがの気配が移動したのが分かった。どうやら反論は諦め、この場を去ることに決めたらしい。
 あの負けず嫌いには珍しいことだと、クナイを手の中で弄びながらひぅと口笛を吹いた。
 これはそのうち、お礼参りやら報復でもされるかも知れないなぁと、天を仰ぐ。
「全くねー、毒なんてあったら飲み込む訳ないじゃないの。ほんっとに、馬鹿な女なんだから。ねぇ?」
 話し掛けた所で、クナイが答えることもなく。
作品名:唇を手の甲に 作家名:刻兎 烏