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ブラックアウト

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ぼんやりと人通りを見続ける。
ここに座り始めて何分経ったのだろう、自分でもよくわからない。
それでもここを動くわけにはいかない、動きたくない(だって、多分あの人がここを通るから)
じりじりと肌を焼く熱に、明日あたり真っ赤になるだろうなぁと回らなくなってきている頭で考える。
大通りにあふれる人たちは何人ぐらいいるのか、かつてのダラーズの集会を思い出してしまう。
けれどあの時と決定的に違うのは、今が昼時だということと、脱退してしまった人・・が、いることか。

チラリと目の端に明るい金髪が映った。
こちらに歩いてくる姿に嬉しくなってしまう(だって僕は全然目立つほうじゃないのに、気付いてくれた)

「よぉ、何見てんだ?」
「いろんな人がいるなぁって。ほら、綺麗な女の人もいっぱいですよ」
「・・・興味あんのか?」

人通りからは少し離れている僕らからは、その動きがよく見える。
せわしなく足を動かす人たちの中には色んなタイプの人たちがいる。
僕と同じぐらいの学生から、サラリーマン姿の男性、大学生風の女性、OLや日傘をさして笑いあう人たち。
そんな女の人たちはみんな一様に綺麗な化粧をして、可愛らしい服をきて、楚々と歩いている。

「興味というより観察に近いですねぇ・・うらやましいなぁって」
「・・?」

こてんと首をかしげるのは止めてほしい。
大人の男の人なのに、静雄さんはどうも可愛らしく見えてしまう(それが悪いわけじゃない、むしろ好きだと思う)(思って、しまう)
僕はにっこりと笑って、座っているせいで普段よりもっと上にある静雄さんの綺麗な顔を見つめた。

「静雄さんって、年上の女性がタイプなんですよね?」
「んなっ!?」

(あ、真っ赤だ)
バッと口元を手で覆い隠すけど、隠しきれてない頬の部分が真っ赤に染まっているのが見えた。
からかうなっ・・と小さな声で怒られるけど普段と違って全然怖くない(普段だって怖いわけじゃないけど)
僕も立ち上がって、少し固まってしまった腰を伸ばして、流れ続ける人々の方に指をさす。

「あの人とか、綺麗ですね。足長くて腰も細くて」
「・・・」
「あっちの人も綺麗な顔ですよ。髪もさらさらです」
「・・・」
「キャリアウーマンっぽい人とか。向こうの通りの人は可愛らしいですね」
「・・・」
「・・・」
「・・・」

静雄さんが喋らないものだから、僕ばかりベラベラと言葉を続ける。
一人ひとり指をさしてその綺麗な姿を評価していく。
僕にはないものを。
決して与えられることもなければ、手にすることもできないものを。

このまま言葉を重ねていっても今の状況が変わるわけじゃない。
それなら、せめて静雄さんがいてくれるこの間に告げてしまおうかと思った(いや、もう言ってしまおう)
おさえることがこれ以上できないなら、この想いなんて、感情なんて、(捨ててしまうべきでしょう?)

「・・・ねぇ、静雄さん知ってましたか?」

歩く綺麗な人たちから、その人たちよりももっと、もっと綺麗だと思う静雄さんの顔をじっと見る。
端正な顔には大きく「?」が浮かんでいた。

「僕、静雄さんのこと好きなんですよ」

サングラスの奥にある優しい目が見開かれたのが見えた。
その虹彩が好きだ。
染めていて傷んでるはずなのに、サラサラとなびく髪が好きだ。
しっかりとした肩幅も、細身に見えるのに強い体も好きだ。
時々天然で、ちょっと照れ屋で、照れ過ぎるとすぐに物を壊してしまって、それに落ち込んでる姿も好きだ。
臨也さんと相対しているときのキレた姿ですら、大勢の人と喧嘩をしている時だって好きだ。
この人を構成するすべてが好きだ。
側に居れたら、触れられたら、笑いかけてもらえたら、そう思うだけで心が跳ねあがる感じを、僕はこの人に会って初めて知った。

作品名:ブラックアウト 作家名:ジグ