flower message
いつ見ても、見事な薔薇園だと日本は思っていた。
よく手入れの生き届いたそこは、今年も例年にもれず大輪の薔薇が美しく咲き誇っている。
見ごろになったから来ないか、と誘われたのは何度目だったろう。
何の憚りもなくまた会えるようになってから数えてもう両手を何周しても多分足りることはない。
「菊、ここにいたのか」
二人きりの時にだけ呼ばれる真名が聞こえて振り返った。
太陽の光に透ける金色の髪が美しいその人は、笑顔で歩いてくる。金色が辺りを染める薔薇の赤と対比的でいい。
西洋の方は人形のようにきれいだと、日本は開国以来ずっと思い続けていることを今日も思ってしまった。
近寄ってきたイギリスは上機嫌にこっちも綺麗なんだ、と日本の手を引いた。
「アーサーさんの薔薇園は本当にいつ見ても見事ですねぇ…」
完璧に隅々まで手入れの行き届いた庭。個人が持つにしては広すぎるそれは英国人にしては当たり前なのだろうか、と日本は思う。
自国の国民でここまで広い庭を持つことができる層なんて限られているし、ガーデニングが趣味なんです、という国民も少ないのが現実だ。
農業が仕事です、趣味です、なんて人は大勢いるのだろうが…。
日本もどうせ作るのなら野菜など食べられるものがいい、とちょっと思っているのは内緒だ。
「んーまぁ趣味だからな。気づいたらこんなになってたな」
「そうなんですか?」
「手をかけて育ててきたものが形になるってのは嬉しいものだぞ」
屈託なく笑うその笑顔に不覚にも少しドキリとしてしまった。
時々イギリスは少年のように無邪気に笑う。
そんなときに自分の生きてきた時間のあまりに長いことを自覚させられてドキリとするのが少し辛い。
「日本はこういうことはしないのか?」
「えー…まぁ似たようなものはあるといえば…ありますが…」
盆栽とか盆栽とか家庭菜園とか盆栽とか。
思っても口に出せないのでにっこり笑ってとりあえずはごまかすことにした。
「へぇー。じゃあ今度ぜひ」
「え、あ、…はい」
墓穴を掘ったなぁと思いつつ約束は約束だ。
次の約束のときまでに用意せねばと日本は軽く吐息をついた。
大体、イギリスが喜びそうなものは大抵自国にはないのが現状だ。
彼が愛している美しいものは自分が美しいと思うものとはかけ離れている場合が多いし、彼が大切にしているアンティークの調度品のようなものだってだって自国にはない。
よく手入れの生き届いたそこは、今年も例年にもれず大輪の薔薇が美しく咲き誇っている。
見ごろになったから来ないか、と誘われたのは何度目だったろう。
何の憚りもなくまた会えるようになってから数えてもう両手を何周しても多分足りることはない。
「菊、ここにいたのか」
二人きりの時にだけ呼ばれる真名が聞こえて振り返った。
太陽の光に透ける金色の髪が美しいその人は、笑顔で歩いてくる。金色が辺りを染める薔薇の赤と対比的でいい。
西洋の方は人形のようにきれいだと、日本は開国以来ずっと思い続けていることを今日も思ってしまった。
近寄ってきたイギリスは上機嫌にこっちも綺麗なんだ、と日本の手を引いた。
「アーサーさんの薔薇園は本当にいつ見ても見事ですねぇ…」
完璧に隅々まで手入れの行き届いた庭。個人が持つにしては広すぎるそれは英国人にしては当たり前なのだろうか、と日本は思う。
自国の国民でここまで広い庭を持つことができる層なんて限られているし、ガーデニングが趣味なんです、という国民も少ないのが現実だ。
農業が仕事です、趣味です、なんて人は大勢いるのだろうが…。
日本もどうせ作るのなら野菜など食べられるものがいい、とちょっと思っているのは内緒だ。
「んーまぁ趣味だからな。気づいたらこんなになってたな」
「そうなんですか?」
「手をかけて育ててきたものが形になるってのは嬉しいものだぞ」
屈託なく笑うその笑顔に不覚にも少しドキリとしてしまった。
時々イギリスは少年のように無邪気に笑う。
そんなときに自分の生きてきた時間のあまりに長いことを自覚させられてドキリとするのが少し辛い。
「日本はこういうことはしないのか?」
「えー…まぁ似たようなものはあるといえば…ありますが…」
盆栽とか盆栽とか家庭菜園とか盆栽とか。
思っても口に出せないのでにっこり笑ってとりあえずはごまかすことにした。
「へぇー。じゃあ今度ぜひ」
「え、あ、…はい」
墓穴を掘ったなぁと思いつつ約束は約束だ。
次の約束のときまでに用意せねばと日本は軽く吐息をついた。
大体、イギリスが喜びそうなものは大抵自国にはないのが現状だ。
彼が愛している美しいものは自分が美しいと思うものとはかけ離れている場合が多いし、彼が大切にしているアンティークの調度品のようなものだってだって自国にはない。
作品名:flower message 作家名:湯の人