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flower message

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東洋には珍しいものが多いな、と喜んでいる姿も見せたが本心でそう言ったのかどうかは日本には分からなかった。
あまりに違いすぎるから、惹かれてしまうのだろうか。
ないものねだりをする子供のように。
「何だ、欲しいのか?」
じっと薔薇を見つめて考え込んでいたら、イギリスが不思議そうに声を掛けてきた。
「いえ、綺麗だなぁと」
「遠慮するな。気に行ったなら貰ってくれると俺も嬉しい」
手袋を外した白い手が徐に一輪の赤い薔薇を摘み取った。
思っていたよりも細くて長い指を持つ手は優美で、いかにもイギリスらしい。
摘み取られた赤い薔薇と、白い手の対比が美しいと日本は思った。
思わず手を伸ばそうとすると、びっくりしたような顔で笑われた。
「ちょっと待ってろよ。怪我すると危ないから」
言うが早いかイギリスは慣れた手つきで棘を抜き取り始める。
その動きさえも優雅に見えてしまうから、本当に恋というものは実に厄介だ。
けれど実際、イギリスの動作はやはりそれなりに洗練されたものだと思う。
フランスもそうだが欧米の文化というものなのだろう。東洋の国はないような所作がたくさんだ。
もしここが自分の家の庭だったとして、棘のついている花をわざわざ棘を抜いてまでプレゼントしよう、なんて気はきっと日本には起こらない。
「ほら、できた」
「ありがとうございます」
「薔薇の棘は意外と危ないからな。気をつけろよ」
ほら、と渡された赤い薔薇。
様々な色の中から彼があえて赤を選んだ理由を考えると顔が赤くなりそうだったのであえて考えないことにした。
本当に、さりげないところで想いを示してくるから時々どうしようもなく恥ずかしくてたまらなくなる。
文化の違いは本当に厄介だ。
やたら好きだの愛してるだのと言ってくるのをなんとかやめさせたが、逆にこういうことをされるほうがもっと気恥ずかしくてたまらない。
嬉しくない、と言えばうそになるのだけれど。
「他にほしいのあるか?」
「え、いえ十分です。ありがとうございます」
「遠慮すんなって」
「本当にこれで充分です。すごく嬉しいですから」
「そうか?」
「はい」
家に帰ったら押し花にして栞にして大事にしまっておこう。
見るたびにきっと幸せな気持ちになるに違いないから。
「ねぇアーサーさん」
「ん?」
「今度は私の家に来てくださいね」
作品名:flower message 作家名:湯の人